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事例報告【報告テーマ】本稿では、経営環境に柔軟に対応し、限られた経営資源を最大限に活用しながら、新しい事業に挑戦し、持続可能な経営の実践に取り組むものづくり企業の支援事例について、以下のとおり概要を報告する。支援事例企業の概要吉本キャビネット株式会社は、1935年9月に、東京都文京区小石川に創立された吉本製作所より、1970年4月に分離し、独立して設立された法人で、派遣社員13名を含む従業員25名、資本金3,100万円のものづくり企業である。【経営理念】社会の変化進展を的確に捉えながら、日々製品改良を行うとともに、新たな製品の開発に情熱を燃やし真に顧客に喜ばれる製品を創造する。【経営方針】・ 研究開発体制の強化整備、生産設備の強化、品質管理体制及び営業体制の充実強化を一層図り、社会の変化・進展を的確に見据え、新たな製品分野の開発に積極的な活動を展開する。・ 社会の要請に応えるべく、これまで以上にニーズへの的確な対応を図る一方、新技術の発展に取り組み、信頼をさらに高め、「明るく」、「力強く」、そして、社会的に存在価値の高い会社を目指す。同社の設立当初における主要取引先は、音響メーカーであったが、取引先が生産拠点を海外にシフトする中、音響メーカーから遊技メーカーへとシフトし、現在では、遊技業界が主要取引先となる。遊技業界は、ヒットする台か否かにより製造台数が極端に上下するため、音響キャビネット、ディスプレイ、アミューズメント用筐体、収納家具、各種木工試作品等を製造し、自主独立の精神に徹し、顧客に喜ばれる製品をつくるように努め、幅広い分野で高い評価を獲得している。経営革新計画への挑戦主要取引先となる遊技業界に依存した経営では、安定した売上や、従業員の雇用確保が難しいという課題があり、2011年頃に、受注が減少傾向にあった音響キャビネットの売上を伸ばす取り組みを検討していた。そこで、「こだわり」の製品には、多少高い金額を払っても良いという消費者ニーズに対応した製品を市場に投入し、「音」にこだわる時間的・経済的に余裕のある30~60代を対象に、今まで培ってきた高品質な音響キャビネットを販売する計画を策定した。同計画は、下請けからの脱却を目指し、同社による製品の販売網を構築し、多様化する顧客のニーズに対応することで、売上を伸ばし、収益の柱を改善させる新しい取り組みであった。策定したビジネスプランが県知事から承認されることで、従業員のモチベーションの向上にもつながると考え、沼口 一幸 持続可能な経営の実践~経営環境に柔軟に対応し、新しい取り組みに挑戦する企業~千葉商科大学経済研究所客員研究員・中小企業診断士スロットマシーン筐体             音響キャビネット49中小企業支援研究 Vol.6

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