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4中小企業支援研究つぎに、Times Higher Education World UniversityRankings 2018によると、世界の大学ベスト100位内に選別された我が国の大学は東京大学(46位、2010年は26位)、京都大学(74位、2010年は57位)の2校のみで国別順位は香港、シンガポール、中国に次いで12位に留まっている。ちなみに、米国は100位中45校、10位内に7校を占めるなど圧倒的な大学教育パワーを顕示している。さらに、研究開発活動の具体的成果である特許出願件数をみると、我が国は2005年には50万件を突破し2位の米国を十数万件も上回るダントツ1位を占めていた。しかし、その後は停滞・減少傾向を辿り、2013年には中国、米国に次ぐ3位に低下している。他方、中国は2004年には7万余件に過ぎなかったが2006年以降に急激に増加し2015年には101万件と10年間で13倍にもなり、日米両国の出願件数を合算した水準に達している( 図表4参照)。中国のこのような驚異的な技術発展は、1990年以降の中国の研究開発投資の急伸と国内・海外の大学・大学院への進学率の急激な上昇、すなわち、中国における研究基盤の強化が結実したものである。3 研究基盤劣化の原因近年になって、我が国の研究開発成果の国際的順位が低下してきている原因として2つの要因が考えられる。第一に、1980年代、90年代を通じて大幅に増大した政府の科学技術関係予算額が21世紀以降ほとんど横ばいに推移していることである。ここ数年の我が国ノーベル賞受賞者の多くは80年代―90年代の豊富な科学技術研究補助金で研究が支えられたと述べている(2018年11月18日「日本経済新聞」30面)。実際、科学技術関係予算額の増加と総論文数とは密接に関連している(図表5参照)。また、国立大学が独法化した2004年度から10年間にわたり国立大学法人運営交付金額が毎年1%減額され、交付金額は2004年度の1兆2,415億円から2015年には1兆945億円となり1,470億円の減額となっている。このため、この交付金で賄われる国立大学教員の数は2016年度には56,148人と2009年度と比較して1,792人も減少している。(文部科学省:http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education)第二に、20世紀末以降の高等教育制度や科学技術政策の「改革」が結果的に研究基盤の脆弱化という副作用をもたらしていると考えられる。大学制度「改革」の嚆矢は有力国立大学を対象にした大学院重点化政策である。これは従来の学部を基礎とした大学から、大学院中心の大学へと大学組織を改編するものである。この改編は1991年から開始され、2000年度までには旧7帝大および一橋大学、東京工業大学の計9大学で実施された。その後7国立大学および一部の私立大学も大学院大学へ移行した。大学院重点化大学では、従来の学部学生数に基づく教員定数が基本的には大学院院生数によって配分図表4 主要国等の特許出願件数の推移注: 出願人の国籍別に、自国及び他国に出願した件数とPCT国際出願に基づく国内移行段階件数を合計したものである。資料:WIPO statistics database.February 2017出所:『科学技術白書 2018』p.85出所: 文部科学省「平成26年度予算の編成等に関する建議」    le:///C:/Users/minat/Documents/文科省資料.pd図表5 科学技術関係予算額と総論文数の推移

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