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『中小企業支援研究』編集委員長前田 進60中小企業支援研究寒暖差の中で春の兆しを感じる季節となりました。皆様のご協力をいただき、編集作業に手間取りながらも、本誌『中小企業支援研究』Vol.6の発刊にたどり着き安堵しているところです。お骨折りをいただいた皆様には心より感謝申し上げます。産業界は今やAIをはじめとした先端技術活用の時代となっています。中小企業においても生産性の向上に向けたこれらの活用は、避けては通れない課題となっています。その一方で、中小企業の経営の現場でしばしば起こる人的資源の育成の問題も、生産性の向上の視点と相容れにくい構図として話題となります。今号はまさに、こうした、産業界の最先端の動向と企業の現場の姿を、両面からご紹介することができたように思います。今号「巻頭言」では本学商学研究科客員教授の大塚愼二先生から、話題の中小企業の生産性の向上と支援策について示していただきました。OECD加盟国35ヵ国中で22位にとどまっている我が国の中小企業の生産性の向上について、IE手法の活用、多能工・兼任による人的能力の向上、IT導入と先端技術の活用の重要性について示唆をいただきました。「評論」では、知的資産の重要性の視点から、青山学院大学名誉教授の港徹雄先生より、研究開発投資の拡大とイノベーションの連鎖を起こす産業システムへの転換の重要性についてご指摘いただきました。日本の研究基盤の劣化の現状から、21世紀の国際市場において競争力を発揮するために、大学をはじめとする研究開発機関や機関職員に対する制度面を視野においた改革の必要性を示唆されています。一方、中小企業の経営の現場からは、喫緊の課題である事業承継が取りざたされています。本年度、千葉商科大学創立90周年記念事業の一つとして開催された、経済研究所主催のシンポジウムでは、「大廃業時代の中小企業支援のあり方」をテーマに、事業の承継・引継ぎ・譲り渡しの支援の方向について報告されました。「シンポジウム・レポート」でその詳細をご紹介しています。この件に関連して、「経営者インタビュー(事例研究編)」でも、サプライチェーンの関係にある企業とM&Aを通じて事業承継を果たした、株式会社ネクステック社長の山梨周氏の事例をご紹介させていただきました。もう1件の「経営者インタビュー」においては、創業237年を迎えた株式会社木田屋商店の10代目後継者、現本部長木田幸太氏より、同社の存続・成長に至る業種・業態の革新的な転換と、世界戦略も視野に入れた新たな活路開拓の取り組みをご紹介いただきました。「トピックス」では、なかでも、独立行政法人中小企業基盤整備機構の佐本由紀子氏から、同機構が取り組む地域の起業家・起業支援者・大企業・研究機関・金融機関・公的機関などの連携によりベンチャーの輩出を目指すベンチャー・エコシステムの構築への取り組みを紹介していただきました。「調査報告」のなかでは、中小企業の一般社団法人商工総合研究所の藤野氏より、海外との取引を展開する中小企業において、事業の継続を図っていく上でCSR(社会的責任)の重要性と今日の企業の取り組みの事例をご紹介いただきました。本誌が皆様の事業の成長・発展、あるいは研究にお役に立てれば幸いです。編集後記

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