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INTERVIEWくて参考になるような話は出来なかったような気がしますが、非常に楽しかったです。人材確保について青木:人材確保についてトークセッションでも他の企業さんが興味を示されてたようでしたが、どのような特徴をお持ちでしょうか。田中:人材が集まらないということは、魅力がないということなので魅力があるように演出しています。研磨の職人は減少しているため、職人を募集しても集まりません。では、職人を育てた場合、その人が高齢になり、また転職して会社を去ってしまうと、また新たに職人を育成しなければならず、育成するためのコストと時間が掛かります。従って、職人を雇うことは選択肢から外すべきと考えました。そこで、女性や主婦の職場進出という外部環境を機会として職人が行ってきた業務を主婦に任せることは合理的だと考え、私のなかで主婦に研磨をしてもらうアイデアが生まれました。ところが、研磨は3Kの職場であり、主婦にとっては魅力がないために研磨業界では主婦が戦力になっていませんでした。そこで、主婦が魅力を感じるように、主婦にフォーカスした会社の仕組みを作ることを考えました。青木:職人の世界に主婦が魅力を感じる会社の仕組みですか。田中:ええ、そうです。主婦は子供の急な発熱、等で直ぐに帰宅しなければならない状況になることがあります。このような理由でまとまった時間で働けなくなることが少なくありません。そこで、当社は突発的な状況にも柔軟に対応できるような勤務体制を取るようにしました。つまり、ドタキャン、ドタ参加を認める勤務体制です。青木:ドタキャンだけではなく、ドタ参加もOKということですか。凄いですね。しかし、シフトがガタガタに崩れると思うのですが、どのような対応をされているのですか。田中:シフトの変更が簡易にできるシステムを自作して対応しています。当然のことながら、給与も1分単位で計算しています。従って、少し早いけれど帰ります、と気兼ねなく言うことが出来ます。この点は主婦には受け入れられていると思います。青木:シフト管理のソフトを自作されたのですか。社長のIT知識を活用されたのですね。それは凄いですね。田中:帰りたいと思ったその場で、リアルタイムで簡単にスケジュールを組めるアプリですが、システム開発は本職のようなものなので、お手のものですよ(笑)  ITで主婦力を活用する青木:高齢化による職人の減少に対応するために、主婦に研磨を任せるという取り組みをされていますが、主婦を職人にするということではないですよね。田中:そうですね。職人を育てるというつもりはなく「職人の仕事を誰でも出来るように手順化する」ことを行っています。主婦にフォーカスして手順化することで、なるべく主婦が取り組み易くすることを心掛けています。そして、手順に従って作業しているのですから「失敗したとしても手順書が悪い」ということで会社は対応しています。つまり、失敗を個人の責任にしないということが、もう一つの主婦の働き易い職場を作っているポイントだと思います。青木:手順化するとはどういうことですか。差支えない程度に教えてください。田中:研磨=職人技と考えるのは、研磨の工程全てに職人技が必要と考えているからです。しかしながら、工程の全てに職人技が必要なのかというと、そんなことはありません。ITエンジニアは手順書を作るのが得意ですからね。青木:そうですか。主婦の活用を支えているのは、ITということですね。田中:それもありますが、研磨という仕事は不可逆な性格を持っており、欠ける、削り過ぎてしまうと元には戻せません。不可逆な失敗のリスクにさらされて、心をすり減らすような作業を含めて請け負っていたのが職人だと思います。職人に頼らないために手順書を作り、治具を使うことで主婦力を活用できるようにしても、失敗することはあります。その時に「何をやっているんだ」と言ってしまうと、職21中小企業支援研究 Vol.8

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