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調査報告もいえるような巧みなバランス感覚の下で、正しい意思決定を積み重ね、それらを先代たちからの教訓(家訓、社訓など)として継承していく力を備えているようなケースは多かったように見受けられた。もはや、不祥事件のイメージとは真逆の、正しい経営姿勢を貫徹していくFBならではのガバナンスの世界が存在しているといっても過言ではないであろう。3.ファミリービジネスの継続力の源泉の一つとみられる「長期的目線」による経営ここまで述べてきたことも含め、FBが備えている「継続力」の源泉をあえて総括するとすれば、それは「常に長期的な目線から企業経営に取り組んでいること」に総括できるのではないかと考えられる。すなわち、FBの経営者たちは、代々より受け継いできた事業の長期存続を念頭に、常に次世代へのバトンタッチを見据えて、100年先をも見据えるがごとく、長期的な目線からの経営を実践していることが多い。このことが、結果的にFB特有の「継続力」の源泉の中核をなしているものと考えられる(図表3)。さらに、FB特有の長期的目線は、取引先や地域などさまざまな利害関係者との長期的な相互信頼関係の構築にも相応の威力を発揮する要因になるものとみられる。一般に、中小企業はそれ単独では存立し得ないものであり、さまざまな利害関係者との関係性のうえで存立していることが通常である。特に、規模の小さい企業であればあるほど、永続を前提とした「地域住民」としての性格も帯びているケースが多く、同じ地域内に存立していることの多い取引先なども含めて、長期継続的な関係性(リレーションシップ)を構築している。こうしたFB特有の長期的目線(経営スタンス)は、さまざまな利害関係者に対して「常にそこに存在している」という安心感を与え、主要取引先や地域社会との世代を超えた信頼関係の構築に大きな威力を発揮している。そこから生まれる信用の積み重ねが、やがては“老舗企業”とよばれるような存在へ進化を遂げていくものと考えられる。ファミリー(家族)とビジネス(経営)の融合を実践するFBにとっては、生活の最小単位であるファミリーの永続性と、その生活基盤を支えるビジネス(図表3)ファミリービジネスの長期的目線(備考)信金中央金庫 地域・中小企業研究所作成42中小企業支援研究

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