中小企業支援研究vol2
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中小企業支援研究 別冊 Vol.214群馬県には「上毛かるた」と言う郷土かるたがあります。かるたの「い」には、「伊香保温泉 日本の名湯」と読まれており、伊香保温泉は日本を代表する温泉地の一つと言っても過言ではありません。そんな名湯の旅館ですら、バブル崩壊後の景気低迷や顧客ニーズの変化と言った環境変化に、苦戦を強いられて来ました。今回ご紹介する㈱晴観荘(市川別館 晴観荘)の近隣では、大手旅館業の傘下となったり、廃業を余儀なくされた同業もあります。そんな中、自助で頑張られている茶木茂直社長にお話を伺いました。社長プロフィール茶木茂直(ちゃきしげなお)、昭和32年生まれ、東海大学卒業後、公共の宿「榛名湖温泉ゆうすげ元湯」に約10年間公務員として勤務、その後当社に入社。大学時代はボート部に所属し、卒業後もボート競技を続けるため、榛名湖畔の「榛名湖温泉ゆうすげ元湯」を勤務地とした。現在もボート競技に関連する協会の要職に就いており、ボート競技で培われた精神は、会社経営に通ずるものがあると考えて会社経営にあたっている。社長就任は平成25年12月であるが、実質的には10年程前から経営者の立場で事業運営を行っている。「保養と健康」に寄与し、癒しの場を提供する富岡製糸場の世界遺産登録が追い風に阿左美 このたびは、千葉商科大学経済研究所中小企業支援機構の機関紙、中小企業支援研究「経営者インタビュー」にご協力頂き有り難うございます。茶木 よろしくお願いいたします。阿左美 早速ですが、御社の現況と業界動向についてお聞かせ頂ければと思います。先ずは、御社の現況について、売上状況や収益状況といった側面からお話し頂けますでしょうか。茶木 昨年は厳しい状況が続きましたが、今年に入って1月から昨年比プラスで推移しております。阿左美 社長はその理由についてどのように分析されているのでしょうか。茶木 一つは富岡製糸場が世界遺産と国宝になり、それが追い風となったこと、二つ目は箱根火山の風評被害による影響と伊香保の地の利の良さかと思われます。地の利の良さといった部分では「思い立ったら伊香保温泉」といったところもあるのですが、箱根旅行を計画していた東京近郊のお客様が、ちょうど同じくらいの距離でアクセスしやすい伊香保に計画変更された状況があるようです。どちらも2時間くらいですからね。阿左美 では業界の動向については如何でしょうか。茶木 群馬県全般が昨年比プラスで推移していると思います。群馬県の温泉地は全般的に富岡製糸場世界遺産登録の恩恵を受けていると思います。箱根火山の影響もあります。ただ、群馬県内でも地の利が遠い温泉地は若干その辺の効果が弱いところもあるかもしれませんね。創業115年の歴史に重圧は感じなかったが、最近のお客様価値観の変化に翻弄阿左美 社長は何代目になられますか。茶木 五代目になります。初代はそば屋から始まったと聞いています。二代目の文吉から本格的に旅館業に参入したとの事です。文吉がこの地を開墾し、町の議長や助役をやっていまして、そのころ色々な事業を始めたようです。三代目の一夫は群馬県のゴルフチャンピオンでした。関東ミッドシニアゴルフ選手権の初代チャンピオンでしたが、66歳の若さで亡くなってしまい、その後、私の義理の母が引き継ぎ、四代目となりました。そして、私が五代目となったわけです。明治34年創業ですから、創業115年で五代目という事になります。阿左美 いつごろ先代から経営を引き継がれたのですか。茶木 先代が高齢という事と体調不良の為、平成25年12月からバトンタッチしました。バトンタッチして2年程になります。阿左美 社長に就任する前はどのようなお立場だったのでしょうか。茶木 先代が体調を崩して、10年程前から実質的な舵取り(事業運営)は私が行っていました。当時は、常務、専務という肩書でした。阿左美 先代は義理のお母様で、創業115年の老舗旅館を引き継ぐことに重圧のようなものは無かったのでしょうか。茶木 伊香保では、創業500年、400年、200年の老舗茶木社長(正面玄関にて)経営者インタビュー【株式会社晴観荘】

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