中小企業支援研究vol3
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中小企業支援研究 別冊 Vol.34た。ですから、売上、在庫が増えても利益が出ない状況でした。しかし、30店舗でやっと製造ロットに到達しました。これらを通じて、自分たちの力で創っていかなければ本物にならないということが確信できました。この間資金繰りの苦労が続き、キャッシュフローが生まれるまでは体にじんましんができるほどのストレスを感じましたね。前例のない事業でしたから、1990年から2001年の間、試行錯誤しながらやっていました。前田 その結果、世界でもオンリーワンの商品、企業が出来上がりました。重永 今後もこのオンリーワン企業ということにこだわっていきたいと思います。そのためにも、自然の恵みから厳選した精油やオーガニックハーブを得るために、世界52か国の諸国の農家と提携しています。前田 現在では、多くの関連事業に拡大していますね。いくつかご紹介ください。重永 アロマテラピー商品の製造販売以外にも、サロン、カルチャースクール、ハーブガーデンなどの運営も行っています。これは、当社のコンセプトである自然・健康・楽しさをテーマに生活科学・生活哲学を通して、モノ、コト、心の豊かさを追求し、提案、販売していくことの実践です。中でも、1996年に「ハーバルライフカレッジ」というスクールビジネスをスタートさせ、さらにアロマテラピーの資格認定制度を作り、アロマの「伝道師」を育成してきたのですが、そのことがアロマテラピーの普及に大きく貢献しました。社員中心の会社へ:自分で目標をつくり、「志事」をつくる社員を育成前田 今後の課題を教えていただけますか。重永 規模は意識しないでいきたいと思っています。世界的な視野をもって、産地、業界を考え、スポーツ、医療などの分野にも進出し、この世界で日本を代表する企業としての提案をしていきたいと思います。前田 このノウハウを将来どのように発展させていかれるお考えですか。重永 次世代の社員の育成が重要だと思っています。21世紀の初めころ、組織について、私の中で大きな気持ちの転換がありました。顧客第一主義という会社は多いのですが、社員大切主義という会社は少ないです。私は縁あって想いや目標を一緒にしている社員の幸せを大切に考える会社でありたいと思っています。社員自身の満足のないところにお客様の感動や満足はないと思っています。社員が働き甲斐を感じる会社のあり方を追求し、実現していきたいのです。前田 サービス・マーケティングなどの研究の中でも顧客満足と従業員満足ということが強調されています。重永 そうですね。そのときそのときの社内の温度を知るために定期的に社員全員にアンケートサーベイを行っています。働き甲斐の意識と、向学心の強い社員の要望に応えて自ら研修を行い、食事会を一緒にする交流会も積極的に行い、本音で話し合える場と機会も作っています。750人の社員の顔を覚えるようにバースデーカードを手書きしたりしています。採用の段階から肉体的、精神的に強いチームビルディングに力を入れています。税引き後利益の3分の1を春夏の賞与に加えて3回目の賞与として支給する利益還元も行っています。このことから2009年度の社員満足度調査では、東日本エリアで第1位の満足会社として評価されました。前田 研修にも力を入れているとのことでしたが。重永 採用後半年、1年、3年の区切りや、昇格のタイミングで研修を行い、次の研修時には自分がどのようになっているかの宣言をしてもらっています。誰もが働きたいと思う魅力的な会社作りをし続けていきたいと思います。さらに、さまざまなグループごとに定期的に勉強会や食事会を行っています。全社員が同じ目線で行動する会社を作りたいと思っています。社員がどのようにやりがいを感じているのかを胸襟を開いて話し合いたいと思っています。そこを聞いておかないと会社のかじ取りはできないと思います。うまくいっているという素敵情報でなく、悪い情報、耳の痛い情報を聞くことが重要なのです。本音の中からまずいところを発見して、悪い情報、報告、兆候を最優先するようにしています。前田 社長室と社員の部屋がガラス張りですね。重永 みんながいつでも入ってきやすいようにしています。前田 社長は、PHPビジネス新書から『まかせる経営―ノルマをなくせば会社は伸びる』(2015)を出版されています。これを出版されるまでのプロセスを伺わせください。重永 「人財こそ企業の宝」という思いです。私は、社内に多様な職種を作り、また、立地や場所に合わせてそ店内VP新たな癒しの空間を創造する“生活の木”本社

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