中小企業支援研究vol6
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中小企業支援研究 別冊 Vol.619続したが、2012(平成24)年を底として以降は上昇傾向にある。就業者数は2013(平成25)年から増加しており、有効求人倍率及び新規求人倍率共に上昇傾向となっている。事業所の従業者規模別の求人数の推移については、500人以上の事業所で横ばいであり、30~99人・100~499人の事業所については緩やかな上昇傾向であるのに対し、29人以下の事業所の求人数については2009(平成21)年以降、30人以上の規模の事業所と比較して大幅に増加している。さらに中小企業の人手不足感については、2013(平成25)年第4四半期以降、全ての業種で人手不足と答えた企業の割合が高くなっており、その後も人手不足感が継続している。特に建設業やサービス業といった労働集約的な業種で人手不足感が顕著とのことである。次に、開廃業について、開業率は1988(昭和63)年を頂点に減少傾向となり、2000(平成12)年以降は上昇傾向に転じ、2017(平成29)年に至り5.6%となっている。また廃業率は1996(平成8)年以降は上昇したが、2010(平成22)年に減少傾向に転じ、2017(平成29)年では3.5%となっている。2000(平成12)年から2010(平成22)年においては開廃業率共に4%台であったが、2010(平成22)年以降は開業率が廃業率を上回り、その差が拡大している2。 経営者の高齢化が進展するなかで、休廃業・解散件数は増加傾向にあり、これに伴い中小企業・小規模事業者数は減少している。この傾向が継続すれば、中小企業・小規模事業者が有してきた製品・商品・技術・サービス、これらを提供するノウハウ等の経営資源が消滅する可能性が高く、この状況では、地域経済はもとより日本経済への影響が計り知れないことから、経営資源を受け継いでいくことの重要性を『中小企業白書3』は指摘している。また「中小企業・小規模事業者の次世代への継承及び経営者の引退に関する調査」4によると、「引退した経営者と、事業承継した後継者との関係」については、図表1が示すように親族内承継が半分で、そのほとんどが子(男性)への承継となっている。他方、親族外の承継も35%を超えている。事業承継の形態別「承継した事業」については、図表2で示すように全体の約90%が、「事業の全部」を引継いでおり、そのうち「社外への承継」では、「事業の一部」の承継の割合がやや高い。 事業承継者の決定後、事業承継で「苦労した点」については、役員・従業員への承継では「承継者の了承を得ること」、社外への承継では「取引先との関係維持」「後継者を探すこと」の回答が多数を占める。これは事業承継の形態によって、承継する際の課題が異なることを示している。また社外での承継では2 海外の開廃業率と日本の開廃業率を比較してみると、開業率については、最高のフランスで13.2%、最低のドイツで6.7%であり、日本の5.6%を上回っている。廃業率についても、最高のイギリスで12.2%、最低のドイツで7.5%と日本の3.5%を上回っている。しかし、日本と統計手法に差異があるため単純比較はできないが、国際的に見ても日本の開廃業率はかなりの低水準である。3 中小企業庁編(2019) pp.74-84による。4 みずほ情報総研(株)が2018年12月、中小企業・小規模事業者の経営者を引退した50,000人を対象に実施。(回収4,984件、回収率10.0%)(出所)中小企業庁編(2019)p.80による図表1 事業承継した経営者と後継者との関係

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