View & Vision No42
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8特 集大学のマーケティング力で市場をつくる ―産学連携による商品開発―42学生からマーケティング企画を募る●事例2 切実なニーズを教えてもらう こちらは現在進行中のケース。アスリート出身の社長がスポーツ用の機能性インソールを開発、先のソチ五輪で日本が獲得したメダル8個のうち、同社のインソール使用選手が4個を占めて業界から注目された。その後もサッカーや野球用途で販売数を拡大していったが、あるとき北海道文教大学で作業療法を研究している奥村宣久教授から「足の疾病治療への効果を検証したい」とのオファーを受ける。 そもそも同社のインソールは、従来製品と異なり、足のかかと寄りにある立方骨を支持することで足アーチを守るという特許理論に基づく。普通のインソールは土踏まず周辺を持ち上げるクッションだが、“踏まず”というように本来は接地してはならないゾーンなのだ。ここを圧迫すれば血流が滞ったり、足指が自由に動かないため運動能力を発揮できないなどの弊害が出る。 奥村教授は、このインソールを長年の痛みに悩む足底筋膜炎の患者に試用させたり、学生に使用させて運動能力や身体バランスがどう変わるかなどを丹念に調査した。その結果、足の痛みが快癒する治験者が相次ぎ、足の障害に効果があることが立証された。 スポーツの成績が向上することも切実だが、足の痛みで歩けなかった患者が苦痛から解放されるというのはまさに切実な効用といえる。大学の知見に基づく着眼から、大きな販路を見つけてもらった格好である。このため、スポーツ用途以上に商品を求めるユーザーが増え、ベンチャーキャピタルからの投資案件がまとまるなどビジネスは大きく開花している。●事例3 デザインセンスを注入してもらう 「デ・キ・物」のうちの一つ、デザインの事例。建材メーカーが環境製品をつくりはじめたが、社内デザインのために印象は薄いものだった。そこで次期新製品のデザインを、千葉大学で教鞭を執り、グッドデザイン賞の受賞歴もある工業デザイナーの清水忠男先生教授に依頼。 一般の工業デザイナーと異なり、コンセプトや意義を大切にする姿勢から生み出された新製品は、インパクトのある斬新なデザインとなって展示会で注目を集め、メディアにも取りあげられた。このデザインはまさに“看板”の役割を果たし、多くの商談がはじまるきっかけを提供してくれるにいたった。 また、清水教授の教え子たちが、展示会に間に合わない実機の代わりに美しい1/10模型を制作してくれたり、ロゴデザインを提案してくれたり、女性視点からの評価をしてくれるなど、大学生の意見を採り入れることにつながり、プロジェクトそのものが若返ったものである。より切実な用途を見出されたインソール

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