View & Vision No42
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11特 集大学のマーケティング力で市場をつくる ―産学連携による商品開発―423)地方創生に向けた大学等知財活用等事例集「特集1 近畿大学」(経済産業省関東経済産業局ホームページ)4)宗像 惠「産学官連携ジャーナル」(Vol.11, No.4, 2015, p.23) 5)小出宗昭「産学官連携ジャーナル」(Vol.10, No.4, 2014, p.16)費、論文掲載料、別刷料等は研究費Bとして支給される分を合わせると、教員一人あたり実質年間約41万円が支給されている。個人研究費AとBの支給は、研究活動に活発な教員の個人負担の軽減に役立っている。 個人研究費Aについては、科研費申請と外部資金獲得の促進を目的として、「科研費申請又は外部資金獲得が無い場合、26万円を13万円に減額される」制度が2008年度から開始された。さらにその減額分を原資として、学内研究助成金制度(一件50万円〜1000万円以内)を設けた。意欲ある教員は、本研究助成金制度を積極的に活用しており、研究活動推進の一翼を担っている。 個人研究費のインセンティブ運用を導入した2008年度の本学の科研費申請件数(596件)は、2007年度(437件)と比較して一挙に36%増加した。その後も年々増加傾向にあり、2015年度(687件)までの8年間で160%に達した。これにより科研費採択件数も2008年度の204件から年々増加し、2015年度には419件と2倍に増加した(図1)。個人研究費のインセンティブ運用と学内研究助成金制度は、本学の研究活動の活性化に役立っていることを示している。 約6000社の中小企業が集積するモノづくりの町である東大阪市に本部を構える本学は、建学の精神である「実学」をモットーに、1970年代から地元企業を中心に産学連携を行ってきた。本学の産官学連携の拠点として近畿大学リエゾンセンター(以下KLC)が設置されたのは2000年2月である。KLCの主な事業として技術相談、共同研究、受託研究、知的財産管理、研究シーズ紹介等がある。それに伴う学内外の諸手続きや事務的業務は「学術研究支援部」が管理、処理しており、KLCと両輪で活動している。また、各学部から1〜3名の教員がKLCの併任所員として任命され、全学体制で産官学連携促進に努めている。これにより、従来、産官学連携は理系の研究成果の実用化に偏っていたが、文系の研究成果も実用化されるようになってきたことは喜ばしい成果である。以下にKLCで産官学連携を推進するために取組んでいる例を示す。(1)相談窓口の強化 企業からの本学の技術シーズ等に関する「相談窓口」で必要な情報を迅速かつ適切に提供できることを目指して、コーディネーター(以下CD)は、日常的な研究室訪問と研究のヒアリング活動、教員の知財への啓発活動を行い、研究成果を把握して、技術シーズの発掘と知財化に努めている。 KLCで技術相談、受託研究、共同研究等を受けた場合は関連する専門分野の教員と共にKLCのCDが同席し、情報を共有するようにしている。両者が協力し、企業ニーズとのマッチングを図っていることで、技術相談、受託研究等の増加につながっている。 教員にはKCL経由での企業からの技術相談等に頻繁に対応してもらうことで、大学で権利獲得している特許技術の新たな開発要請に発展し、商品化へのチャンスが広がっていく要因になっている。 KLCのCDが、これまで発掘・紹介してきた本学の研究シーズに加えて、日頃から築いてきた信頼される人的ネットワーク等が産官学連携の推進に役立っていると考える。KLCは学術研究支援部と協働で、企業が連携したくなるパートナーを目指して努力してる。 CDが企業等からの相談に答えを見つけ出すためには次の3つの適性・資質が必要とされる5)。①コミュニケーション能力が高いこと(相手の話を徹底的に聞くことが、結果的に問題発見能力につながる)、②労を惜しまないフットワークの良さで問題解決に務める(企業や教員から信頼される人的ネットワークの構築リエゾンセンターを核とした産官学連携の推進3,4)2図1 科学研究費採択件数の推移

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