View & Vision No42
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13特 集大学のマーケティング力で市場をつくる ―産学連携による商品開発―42ことも要因となっている。企業等からの相談に対応した教員に支払う相談料を創設したことである。技術相談1件につき、15,000円の研究費支援が支給される(金額は、近畿大学の授業の増担手当や全国の相談手当を参考に算定している)。 以前は技術相談への対応を教員に依頼しても、多忙を理由に引き受けてもらえないことも多々あったが、こういった動機づけを創設したことで、拒否される例も減少した。 さらに文部科学省の調査によると、2014年度の民間企業からの近畿大学の受託研究実施件数239件は、全国の国公私立大学の中で2位という実績をあげている。ちなみに2013年度(254件)1位、2012年度(195件) 3位、2011年度(221件)1位で、日本の大学でトップクラスを維持している(図4)。本学の研究力が社会から高く評価されていることを示している。 近畿大学とUHA味覚糖との産学連携によって近大マグロの皮から抽出した希少なフルレングスコラーゲンを使用したビューティケア新ブランド商品『美はお口から研究所』(リップスクラブとグミサプリ)の開発を行った(図5)。これまで産学連携を推進してきたが、取り組んだ課題は理系がほとんどである。しかしながら、商品開発と販売は、技術、デザイン、マーケティングなどを総合した経営戦略のうえに成り立つものであるという考えのもと、今回の商品開発にあたっては、近畿大学は西日本最大規模の私立の総合大学であるという特徴を活かして、理系と文系の研究者が協働で取り組む文理融合型産学連携で行った。 具体的には商品化の基本技術となる近大マグロのフルレングスコラーゲン(市販されているコラーゲンと比べて約2倍の保湿効果を有する)の抽出・分析方法の開発は薬学部の多賀准教授、パッケージデザインとPOPは文芸学部の岡本教授、そしてマーケティングは経営学部の松本教授が担当し、それぞれで商品イノベーションにつながる優れた成果を上げていただいた。新商品は2016年2月22日にUHA味覚糖から発売されたが、メディア露出度も高く、売れ行きも好調であると聞いている。文理融合型産学連携の成功要因の一つとして、CDが企業と研究者、研究者間の相互理解を深める役割を担ったことも大きいと思われる。多様な技術や製品イノベーションは、技術をつくりだ図5 ビューティケア新ブランド商品「美はお口から研究所」0 50 100 150 200 250 300 350 9 10 11 12 13 14 15 ‘9‘10‘11’12’13‘14‘15305相談等件数2501559380468倍に増加38文理融合型産学連携で新商品開発3図3 技術相談等件数の推移図4 受託研究の実施件数と全国大学の順位

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