View & Vision No42
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15特 集大学のマーケティング力で市場をつくる ―産学連携による商品開発―42 我が国における中小企業・小規模事業者1(以下、中小企業)の休廃業・解散企業数は、長期的に増加傾向にあり、近年は倒産件数の倍以上の水準で推移している2。この背景には、経営者の高齢化や事業の将来性が見通せない中で、経営余力があるうちに事業を閉じておこうという経営者の判断が感じられる3。このように、中小企業経営者の高齢化・後継者難は、いっそう深刻化し、次代を担う若い経営者や働き手が集まりにくい状況が続いていくものと推察できる。 一方で、近年の大学教育では、産学連携によるPBL (Project Based Learning)が注目を浴びている。これは、与えられた課題を解決していく中で能力の育成を目指す課題解決型学習であり4、中小企業はこのPBLによって若い学生との交流機会を増やすとともに、若者目線のアイディアを経営に取り入れることで、若い人材・後継者予備軍が集めやすくなると考えられる。したがって、このPBL型の産学連携による商品開発などは、学生に実学の場を提供するとともに、中小企業の後継者問題に貢献する支援活動としても有益な取り組みといえる。 しかし、兼本[2015]が指摘するように、学生は商品化のみで満足をしてしまう傾向があり、産学連携による話題性があるからといって、商品開発の資金確保が困難で、長く売れ続ける商品であるという確信も無く、利益を上げられるという判断がなければ、企業側は商品化や産学連携に取り組むことを躊躇する5。 そこで、本稿では、中小企業の後継者問題の現状と千葉商科大学商経学部の産学連携事例、国の補助事業制度を確認し、産学連携のための十分な資金を有しない大学や中小企業が、当該補助事業制度を活用した産学官連携事業による商品開発に取り組むことによって、大学が質の高い実学の機会を学生に提供するとともに、経営資源の乏しい中小企業の商品開発と後継者問題などに貢献する支援策について探っていく。  近年、廃業した中小企業の多くが、経営者の高齢化1 「中小企業」の定義は、中小企業基本法第2条に依拠する。「小規模企業者」とは、中小企業基本法第2条第5項に規定する従業員20人以下(商業(卸売業・小売業)・サービス業は5人以下)の事業者等を指す。「小規模事業者」とは、商工会及び商工会議所による小規模事業者の支援に関する法律第2条に規定する商工会・商工会議所の支援対象となる小規模の商工業者や、所得税法施行令第195条に規定する青色申告を行う不動産所得の金額及び事業所得の金額の合計額が300万円以下の事業者等を指す。2 中小企業庁[2014]『中小企業白書2014年版』日経印刷, 272頁3 中小企業庁[2014]『中小企業白書2014年版』日経印刷, 277頁4 藤井文武・平尾元彦[2010]「社会人基礎力を高める授業の実践―産学連携PBL授業『アクティブラーニング』の取組―」『大学教育』23頁5 兼本雅章[2015]「共愛学園前橋国際大学論集」第15号, 29頁特 集産学官連携と中小企業支援中小企業の廃業と後継者問題2プロフィール早稲田大学大学院アジア太平洋研究科修了。マイクロソフト社(現日本マクロソフト社)等に勤務後、現在に至る。佐竹 恒彦SATAKE Tsunehiko佐竹経営研究所代表、中小企業基盤整備機構経営支援アドバイザー、千葉商科大学商経学部非常勤講師、早稲田大学エクステンションセンター講師はじめに1大学のマーケティング力で市場をつくる ―産学連携による商品開発―

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