View & Vision No42
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16特 集大学のマーケティング力で市場をつくる ―産学連携による商品開発―426 中小企業庁[2014]『中小企業白書2014年版』日経印刷, 272頁7 中小企業庁[2014]『中小企業白書2014年版』日経印刷, 281-282頁8 事業価値は企業が将来生み出すキャッシュの現在価値の合計を表している(帝国データバンク[2014]「60歳代の社長、半数強が後継者不在-後継者不在企業の“稼ぐ力”に課題-」『特別企画:後継者問題に関する企業の実態調査』4-5頁)。9 帝国データバンク[2014]「60歳代の社長、半数強が後継者不在-後継者不在企業の“稼ぐ力”に課題-」『特別企画:後継者問題に関する企業の実態調査』5頁や事業の将来性が見通せない中で、経営余力があるうちに廃業を決断している。1982年以降、廃業者数は20万人を超える数で推移しており、今後さらに経営者の高齢化が進む中で、廃業者数が大幅に減少することは想定しづらい6。 中小企業庁[2014]によれば、経営者が廃業を決断した理由は、図表1に示すように、「経営者の高齢化、健康(体力・気力)の問題」が最も多く、「事業の先行きに対する不安」がそれに続いている。「経営者の高齢化、健康(体力・気力)の問題」については約5割に達しており、多くの経営者が、経営者本人の年齢や健康問題を理由として、廃業を決断していることがわかる7。 ここからは、経営者のみならず、従業員などの次代を担う若者が中小企業には集まりにくいといった雇用問題を抱えている状況にあることが推察でき、深刻な人材不足に直面しているともいえる。それゆえ、中小企業においては、若い経営者や従業員が不足しており、供給量としての生産力低下の問題のみならず、マーケティング力の観点から若い消費者層の視点や志向が欠けるので、市場ニーズの変化に対応できず、企業業績が悪化する傾向にあるといえる。 帝国データバンク[2014]によれば、図表2に示すように、企業の「稼ぐ力」は社長年齢が「70歳代」を超えると急速に下降線をたどり、社長が「80歳以上」の企業では、ピークである「60歳代」の6割程度に低下し、とくに「後継者不在」企業では、「70歳代から」大きく売上高事業価値比率8が落ち込み、「80歳代」は「60歳代」の3分の1以下にまで下降し、遅くとも社長年齢が70歳となるまでに事業承継体制が整っていないと、企業の成長力・収益力ともに大きく落ち込む可能性が高いと指摘している9。 このことからも、学生が主体となって取り組むPBL型の産学連携事業は、次代の担い手であり、経営者・後継者予備軍でもある若い学生との交流機会や学生たちの消費者目線としての素人力の活用、すなわち若者ならではのアイディア、志向を反映させる絶好の機会を提供し、その重要性や価値は近年、ますます高まっているといえる。図表1 廃業を決断した理由資料:中小企業庁委託「中小企業者・小規模企業者の廃業に関するアンケート調査」(2013年12月、(株)帝国データバンク)(注)1.回答割合が3% 以下の回答を「その他」に含めた。2.「経営者の高齢化、健康問題」及び「体力・気力の問題」と回答した割合の合計を、「経営者の高齢化、健康(体力・気力)の問題」として表示している。出所:中小企業庁[2014]282頁

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