View & Vision No42
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17特 集大学のマーケティング力で市場をつくる ―産学連携による商品開発―42 次に、千葉商科大学商経学部における産学連携プロジェクトの取り組み事例について確認する。 千葉商科大学商経学部は、純粋チョコレートを使用した商品の製造販売を手がけるロック製菓株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役吉村健一氏、資本金1,100万円、生産工場:千葉県八千代市)と産学連携協定を2015年7月に締結したことを機に、学生たちが健康志向のチョコレート菓子の商品開発に挑戦した。当該商品は、砂糖不使用チョコレートと健康食品として人気のグラノーラの組み合わせにより、カロリーを抑えた「SANUS10チョコレート」として開発された11。また、この商品開発は「高大連携事業」の一環とて展開されたプロジェクトであり、山形県立米沢商業高等学校の協力を得て、当該高等学校の生徒による試作品の評価、パッケージデザインや価格などに対する意見が反映されたものとなっている12。 本プロジェクトは産学連携の枠内で商品開発を学ぶにとどまらず、高校生や大学生たちが自ら当該商品を販売し、千葉商科大学商経学部の学生が中心となって、株式会社化を図り、事業展開することを目標に取り組んでいる。また、クラウドファンディングの仕組みを利用するなどして、商品開発費や当面の運営費を賄うための一部の資金として約70万円を調達し、連携先の米沢商業高等学校の生徒たちとともに、広報活動や販路開拓、営業など学生たちが主体となって行い、実社会と同様のビジネスに挑んでいる13。 そして、2016年5月15日に開催された山形県米沢市のイベント14において、千葉商科大学商経学部の連携先である米沢商業高等学校の生徒が主体となって、当該チョコレート約100個を販売したが、わずか2時間で完売させるとともに、2016年6月末現在においては、当該大学における在庫も全てなくなってしまうという好調な滑り出しを見せ、一定の成果を上げることができた。 その後、米沢商業高等学校からは、次期開発商品として、米沢市の地域資源である「うこぎ」15を使用した当該チョコレートの商品化を検討したいとの相談がもちかけられた。しかし、千葉商科大学だけでは商品化や事業化の資金を十分に確保することは困難であり、地元中小企業である「うこぎ」の生産加工業者も、後継者問題を抱え、経営資源も乏しいことから、事業化は困難であることが想定される。 そこで、米沢市の協力も得ながら、経済産業省所管10 SANUSはラテン語で「健康的な」を意味している。11 商品名:「SANUSチョコレート」、販売価格:220円(税抜)、内容量:32グラム、特長:9種類の穀物とフルーツを配合したグラノーラと砂糖不使用チョコレートを使用。12 千葉商科大学商経学部の非常勤講師による出張講義を2015年の11月より実施している。13 千葉商科大学ホームページに掲載された情報などを参考に記述した。14 このイベントは、「ドラマチック戎市」と称されている。15 「ウコギ」はウコギ科の植物で、米沢地方では古くから食用を兼ねた垣根として利用されており、がんなどの病気や老化を招くといわれる生物ラジカル・活性酸素を抑えるサポニン類、ポリフェノール類を多く含んでいる(http://www.mindp.co.jp/ukogi)。千葉商科大学商経学部の産学連携プロジェクト3図表2 売上高事業価値比率×社長年齢出所:帝国データバンク[2014]5頁出所:千葉商科大学ホームページ「SANUSチョコレート」(写真)国の補助事業を活用した産学官連携による中小企業支援4

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