View & Vision No42
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18特 集大学のマーケティング力で市場をつくる ―産学連携による商品開発―42の中小企業による地域産業資源を活用した事業活動の促進に関する法律(中小企業地域資源活用促進法)に基づく国の補助事業制度を活用し、商品化と当該中小企業を支援する取り組み、すなわち図表3に示す「産学官連携による支援スキーム」によって、当該中小企業の商品化とその資金調達などの支援を行いながら、学生たちとの交流機会を増やすとともに、質の高い実学機会を学生に提供する試みを提案したい。 この中小企業地域資源活用促進法は、各地域の強みである地域産業資源を活用して新商品・新サービスの開発等を行う中小企業者の事業活動を促進し、地域経済の活性化を図ることを目的としており、中小企業者が地域産業資源活用事業計画を作成し、国の認定を受けると、専門家による助言や補助金、政府系金融機関による融資制度、信用保証の特例などの支援を受けることができる16。 したがって、高校生や大学生たちが、後継者問題に悩む中小企業において不足しがちな消費者目線や若者視点の観点から、地域の産業資源を使用した商品開発のアイディアやマーケティングプラン、事業計画を「ペルソナ・マーケティング」17などの手法により検討し、国の補助事業制度を活用した資金調達などの支援に携わることで、後継者問題を抱える中小企業との交流機会が増えるとともに、事業承継や雇用問題、地域活性化にも貢献しようとするこの産学官連携による支援スキームは、学生たちに質の高い実学の機会を提供するだけにとどまらず、中小企業を支援する有望な一つの方法と考えられるのである。 本稿では、中小企業における後継者問題の現状や千葉商科大学商経学部の産学連携事例、国の補助事業制度である中小企業地域資源活用促進法について確認するとともに、産学連携のための十分な資金を有しない大学や中小企業が、当該補助事業制度を活用した産学官連携事業による商品の共同開発に取り組むことで、大学が質の高い実学の機会を学生に提供するとともに、経営資源の乏しい中小企業の商品開発と後継者問題などに貢献する支援策について探った。 その結果、産学連携のための十分な資金を有しない大学が、当該補助事業制度を活用した産学官連携事業に取り組むことによって、学生による地域資源を使用した商品開発のアイディア出し、マーケティングプランや事業計画の策定、資金調達などの支援を行いながら、後継者問題を抱える経営資源の乏しい中小企業の発展や地域活性化に貢献し、学生に質の高い実学の機会を提供するという「産学官連携による支援スキーム」を提示し、その有用性を示唆した。 今後は、この「産学官連携による支援スキーム」を実施し、具現化するにあたっての問題点を明らかにするとともに、これを実現させる具体的な教育プログラムのあり方や運用方法などついて、さらに検討する必要があると思われる。おわりに5図表3 産学官連携による支援スキーム(概念図)出所:筆者作成16 詳細は、山形県ホームページ「地域産業資源の内容の指定について」を参照されたい。17 「ペルソナ・マーケティング」とは、商品を購買する最も象徴的なユーザモデルを1名設定して行う方法を指す(星田昌紀[2014]「ブログを利用したペルソナ・マーケティングにおける購買意志決定の研究」『千葉商大紀要』第52巻第1号, 145頁)。

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