View & Vision No42
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21特 集大学のマーケティング力で市場をつくる ―産学連携による商品開発―421 筒井孝子(2014)『地域包括ケアシステム構築のためのマネジメント戦略』29-30頁題であるような気がする。 一言で申し上げると“抽象概念思考”が苦手で、“具体的に示してあげないとわからない”レベルの若者たちに対して、どのような教育的指導を行っていくか、ということだと思う。 そこで考えたのが“産学連携による商品開発”だ。次章で本プロジェクトの考え方、商品開発の捉え方、について論じる。<NPO銀座ミツバチプロジェクトのメンバーと学生たち> 第1章でも述べたように、私たちは、アベノミクスが信任された今、経済成長という最も大事な課題に対し、身近なところで今までにない経済成長に繋がる新たなマーケット開発の考え方、商品開発の考え方を含めたコンセプトメイキングをしなければならない。 その過程であらためて“能力”、特に今後求められる“能力”について述べておきたい。 “能力”を二つの概念で捉えておきたい。一つはability、もう一つはcompetence。  abilityは一般的に用いられている能力で“練習、訓練することによって上達する能力”。competenceは一言で表現すると“環境の変化に対処できる能力”である。 高度経済成長期に必要とされたのは、敷かれたレールの上をできる限り忠実に、正確に、スピーディにやり遂げることのできる、大量生産、大量消費社会に適応できる人材であり、兵隊としての“能力(ability)”であった。だが、我が国は人口減少社会、少子高齢化社会を迎え、かつ今回の参院選では、消費税増税の先送りを与野党すべてが是認し、「社会保障の充実」を言いながらも、財源は不明という、中高年には優しいが、将来世代にツケを回すという相当に厳しい状況である。そうした流れの中、あらためて必要とされる“能力”がcompetenceであろう。 環境の変化に対処できる“能力”は、今すでにある文化(ものの考え方、処理の仕方)の部分修正、焼き直しではなく、新しい概念創造である。しかしながら、いわゆる“今どきの若者たち”は先にも述べたように、スマホ文化の影響もあって「抽象概念思考」が苦手になってしまった。 では、どうするか? そこで選択したのが、具体的に目で見えて、わかり易く、成果をはっきりと身近に可視化できる「大学の屋上で芋を育てる」というプロジェクトであった。ただし、それだけではあまりにも“軽く”本学の人間社会学部で実践するプロジェクトとしては、意味づけに欠けている。だからという訳ではないが、そこに次章で述べる「地域包括ケアシステム」の概念をリンケージさせ、持続継続が可能なフレームと、社会保障の枠組みの中から、「障害者就労支援」「認知症対策(若年性認知症対策)」を付加するものとしてスタートしている。 地域包括ケアシステムという言葉は2005(平成17)年の介護保険制度改革において、「地域におけるケアのあり方を中心とする改革」という文脈で用いられた。 この具体的な施策として、「地域包括支援センターの創設」「ケア付き居住施設の充実」「新予防給付・介護予防事業の創設」「小規模多機能居宅介護等の地域密着型サービスの創設」「食費・居住費の見直し」など、利用者に最適なサービスを継続的に提供するシステムの構築を目的に医療・介護などの各種サービスの連携をより一層推進し、制度横断的な改革をするために行われるものであることが説明されてきた1。今後2025年に向けて目指すのは「地域における高齢者の地域包括ケアシステム推進の背景5これから必要とされる“能力”との関係4

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