View & Vision No42
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24特 集大学のマーケティング力で市場をつくる ―産学連携による商品開発―42必要になってくることがご理解いただけると思う。大学がマーケティング情報の発信源となり、自治体の総合事業の枠組みの中で、地域にすでにあって活動していたボランティア団体、NPO団体と連携し、商店街にも協力してもらいながら、新たな地域支援を生み出す。そうした課題解決の体験学習として「銀座芋ROCKプロジェクト」を位置付けしている。<屋上の芋プランター> インターネット社会は大きな環境変化を生み出した。特に“スマホ文化”は現代人の生活を劇的に便利にしてくれている。だが同時に“人と人との繋がり”を希薄にしてしまっている側面もある。少子高齢化、人口減少社会において、地域を包括的にサポートし続けるシステムを構築するには、まず大学は地元地域に対し、門戸をオープンにし、研究機関としての役割を果たしながら、今後必要とされる人材を育成し、かつ、学びたいという意欲を持つ住民に対しRetirement Communityのような機能も求められていると思う。 「銀座芋ROCKプロジェクト」を三つの切り口で総括してみると、まず、大学の屋上で芋を育て、その芋が障害者就労支援の農場で育てられた芋、都会のビルの屋上や高齢者施設の屋上で育てられた芋と一緒に福岡の酒蔵で焼酎になり、その焼酎がお洒落にデザインされた瓶に詰められ、銀座の百貨店で商品として売られる。その流れはまさに“六次産業”であり、その過程で様々な異業種がソーシャルビジネスパートナーとして関わりを持っている。そのようなビジネスの切り口が一つ目。 二つ目は、大学の屋上で芋が育ち、その芋たちが焼酎に商品化され、さらに、「安納芋」などのスィーツ系の芋は地元の商店街で地域に密着した商品化に繋がる大きな可能性を秘めているということだ。そうした繋がりは地元の商店街との繋がりを作り、それが地域住民、子供たちとの繋がりにも波及していく。要するに地域包括ケアシステムネットワーク構築の大前提となる“人的(顔の見える)ネットワーク”作りに繋がるという切り口である。 三つ目はサスティナビリティの重要性である。このようなプロジェクトはいかに継続させるか、が大事なポイントである。幸いなことに本学人間社会学部の学生諸君は、授業の合間に現在16名が近隣の高齢者施設で実習研修を行っている。高齢者施設の屋上で芋を育てるアクティビティ実践においては、彼らがサポーターとしての役割を果たしてくれていて、高齢者施設で暮らす高齢者の“生活不活発病”防止にも一役買ってくれている。さらに、卒業後はその施設職員として勤務する可能性も大きいので、在学中から就職先、そして数年後は施設の幹部として新たな学生を実習生として受け入れるという継続性を持ったストーリーを描くことができる。また、先にも述べた障害者就労支援、若年性認知症の方々の就労支援については、“農作業”という継続可能な就労プログラムを地元の社会福祉法人、NPO法人、自治体の担当者と連携しながら、新しい“働き方”として地域支援事業へ進化させることが、まさに大学としての役割の一つになると考える。 「銀座芋ROCKプロジェクト」は今年で二年目を迎えている。今後は芋の種類に変化を持たせたり、屋内用プランターを使った新たな緑化プロジェクトも検討中である。 我が国の人口構造の推移は2050年までしばらくは高齢者しか増えない社会である。しかしながら2050年以降の日本社会を支える主役は今の若者たちである。2018年以降、18歳年齢人口も減少し、大学進学者も激減して行く中で、あらためて大学が果たすべき役割に対し、私たちは真剣に向き合うべきである。 そうした中で、「大学のマーケティング力で市場をつくる」というテーマは商科大学としての伝統的な文化をベースに持つ本学にとって大きな可能性を持ったテーマであると思う。 今後も、産学連携というマインドをベースに、“地域”に視点を向けながら、地元の子供たち、商店街、行政、住民の方々を巻き込みながら、若者たちが“自ら”学び、成長できるフィールドをアクティブラーニングを通して実践していきたいと思う。おわりに9

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