View & Vision No42
28/62

2642るわけです。その際、当初は、バズワードとは悪いものだ、というようなニュアンスで話をしていました。理系人間の私としては必然的にそうなります……が、上の説明にもあるように、ポジティブに言えば「宣伝文句」であり、「消費者に向けてのキャッチコピー」であるわけで、商学的立場からすれば、決して悪いものではないかもしれないな、と、思い直しています。 前置きが長くなりましたが、以下、私が授業内でバズワードだと明言している「クラウドコンピューティング」「ビッグデータ」について、そして、まだ明言はしていませんが、2016年現在、バズワード的に利用されるようになってきた「人工知能」について、商学と情報工学の両面から、つらつらと述べていきたいと思います。 クラウドコンピューティングという【ことば】は、2008年頃からIT業界で使われ始めました。2016年現在でも一般的に使われており、MicrosoftやGoogle、Amazonといった大手企業が「クラウド」と銘打った様々なサービスを提供し、商業的に成功を収めています。このクラウドとは雲(cloud)のことであり、クラウドコンピューティングを説明するときには、次のような図が用いられることが多いです。 この図がどのようなことを意味しているのか――それを説明する前に、まず【ことば】の意味を確認しておきましょう。【ことばの意味】 オンラインIT用語辞典 e-Words には、以下のように説明されています(一部抜粋)。 クラウドコンピューティングとは、従来は手元のコンピュータで利用していたソフトウェアやデータを、インターネットを通じてサービスの形で利用する方式。 さて、それでは次に「シンクライアント」という1990年代半ばから使われている用語について、同じくe-Wordsの説明から抜粋します。 シンクライアントとは、システムの利用者が使うコンピュータ(クライアント)に最低限の機能しか持たせず、(ネットワーク上の)サーバコンピュータが集中的にソフトウェアやデータを管理する方式。また、そのようなシステムに用いられる。 どちらも同じようなことを言っています。このような方式、つまり「ソフトウェアやデータをネットワーク経由で利用する」という仕組みは、それこそインターネットが普及するずっと前、コンピュータネットワークが実現された1960年代から存在しており、シンクライアントに限らず、様々な言葉で呼ばれていました(それぞれ「ニュアンス」は異なりますが)。 また、野村総合研究所が毎年発刊している『ITロードマップ』の2009年度版においても、次のように記載されています。 2008年のIT業界におけるバズワードの1つは「クラウドコンピューティング」であろう。(中略)さまざまなベンダー(製造業者)がそれぞれ微妙に異なるニュアンスで使用していることもあり、定まった定義はない。 その後、2012年度版まで、重要技術のひとつとして取り上げられていますが、2011年度版においては「定義がゆらぎはじめている」などと書かれていたりするあたり、執筆の苦労がうかがえます。このように「定義が曖昧である」という点は様々な文献で言及されているほか、IT業界の著名人によっても「技術的に新しいものではない」などと批判されてきました。 しかし、2016年現在、クラウドコンピューティングという言葉は、完全に定着しており、バズワードと2.クラウドコンピューティング

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

page 28

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です