View & Vision No42
3/62

142産学連携による地域活性化 ―その意義と課題―巻頭言近年、大学が企業とコラボレーションし、商品・サービスを開発する試みが盛んに行われています。「大学発ベンチャー」という言葉も一般的になりつつあり、大学のもつ専門知識や学生の力、地域とのネットワークなどを活用することで、これまでにない斬新なプロダクトを生み出すことが期待されています。実際、近畿大学の「近大マグロ」、「ユーグレナ」のミドリムシ製品のように社会から大いに注目され、収益を生み出している例もあります。 千葉商科大学としても、近隣の企業の皆様とともに健康志向のチョコレート、メロンパン、芋焼酎といった商品を開発し、各種メディアに大きく取り上げられています。学生の自由な発想力、企画力を活かし、また本学のコアコンピテンスであるマーケティングに関するすぐれた知識を用いて、社会に必要とされる商品を生み出していこうと、力をいれています。 一方で、数多く生み出される産学連携プロダクトのすべてがうまくいっているかというと、決してそうとはいえません。産学連携は、開発コスト、人材育成、適切なパートナー探し、持続性、収益性といった点で数多くの課題を抱えています。産学連携活動を推進することで、大学が正しく社会に貢献できているのか、パートナー企業の皆様のお役に立っているのか、学生の成長の場となっているのか、教員の専門知識・教育力を伸ばせているのか、など、大学として産学連携に取り組む意義を改めて考える必要があると認識しています。 そのためには、企業の皆様、地域の皆様とより密に交流するプラットフォームを構築していくことが重要となります。社会のニーズ、企業の持つ技術力、大学の持つ専門力、そして何より若い学生の持つセンスをしっかりと把握し、それらを適切にマッチングし、多方面から産学連携を模索し、推進し、検証していく場を作っていかなくてはなりません。そうした試みが、少子高齢化、グローバル化という現代社会が抱える課題に対する答えの一つになるのではないかとも考えています。 千葉商科大学では、地域連携推進センター、経済研究所をはじめ、そうした活動の受け皿になりうる組織があります。地域連携推進センターでは、地域連携・ネットワーク戦略に基づき、地元の市川市や千葉県税理士会等と協定を締結し、創業支援、高大連携、学生ボランティアなどの活動を行っています。経済研究所では、地域社会・地域経済に貢献できる様々な研究を推進しています。こうした組織を活用して、千葉商科大学では、産学連携をさらに進めていきたいと考えております。企業の持つ力と教員の持つ力、学生の発想力・行動力を連携させることで、シナジー効果が生まれ、社会に役立つ新たなプロダクトを生むことができる、社会に貢献できる人材を育成できると考えています。 大学がさらに地域社会に貢献し、すぐれた学生を世に送り出すために、産学連携は極めて大切なプラットフォームとなります。千葉商科大学も、地域の皆様、企業の皆様との連携をますます深めていくべく、今後も様々な活動を推進していきたいと考えています。プロフィール1943年、東京生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業、同大学大学院博士課程修了、米国ウィスコンシン大学にて博士号取得。経済企画庁経済研究所客員主任研究官、内閣府特命顧問、富士通総研経済研究所理事長など多くの要職を務める。2007年4月より現職。著書に、『盛衰 日本経済再生の要件』東洋経済新報社、『岐路 3.11と日本の再生』NTT出版、『日本の壊れる音がする』朝日新聞出版、『雇用改革』(共著)東洋経済新報社、『明るい構造改革』日本経済新聞社など多数。千葉商科大学学長島田 晴雄SHIMADA Haruo

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

page 3

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です