View & Vision No42
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3842地方創生における地域金融機関の役割と課題トピックス 2014年9月3日の第2次安倍改造内閣発足時に「地方創生」という政策が掲げられた。これはローカル・アベノミクスとも呼ばれている。この政策の下で、地方金融機関は地方創生に寄与することが政府や金融庁から求められている。 それではこの政策の下で地域金融機関は実際にどのような地方創生に貢献する活動を行っているのか、それにはどのような課題が残されているのか。本小論では地方創生戦略について略述したうえで、このことについて述べてみたい。1 地方創生戦略構築の背景 最初に地方創生戦略について述べておこう。我が国における急速な少子高齢化の進展に的確に対応し、日本全体、特に地方の人口の減少に歯止めをかけるとともに、東京圏への人口の過度の集中を是正し、それぞれの地域で住みよい環境を確保して、将来にわたって活力ある日本社会を維持していくことが喫緊の課題となっている。これがその政策構築の背景である(西川和宏[2016]内閣官房まち・ひと・しごと創生本部「まち・ひと・しごと創生『長期ビジョン』『総合戦略』」(パンフレット)も参照されたい。)2 国と地方の地方創生総合戦略の内容(1)国の地方創生総合戦略 次に地方創生総合戦略の内容について見てみよう。これには国の戦略と地方の戦略とがある。最初に国の戦略について論ずることとする。政府は2014年末に「まち・ひと・しごと創生」の長期ビジョンを閣議決定した(閣議決定[2014a])。この中では、2060年に1億人程度の人口を確保し、2050年代に1.5~2%程度の実質GDP成長率を維持するといった中長期展望が示されている。 政府は2014年末に「まち・ひと・しごと創生」の「総合戦略」を閣議決定した(閣議決定[2014b])。これは2020年までに地方で30万人分の若者雇用を総出するなど向こう5年間での達成目標を掲げている。 地方創生政策は、人口減少と地域経済縮小の悪循環という危機的な課題を克服するために、東京一極集中を是正して人口減少に歯止めをかけるとともに、①潤いのある豊かな生活を安心して営むことができる地域社会の形成(まち)、②地域社会を担う個性豊かで多様な人材の確保(ひと)、③地域における魅力ある多様な就業機会の創出(しごと)を一体的に推進することを目的にしている。すなわち、地方において「しごと」が「ひと」を呼び、「ひと」が「しごと」を呼び込むといった好循環を形成することにより、人々が安心して生活し、子供を生み育てられる、活力ある地方経済・社会の形成を目指しているのである(木村俊文[2015]、閣議決定[2014b]、閣議決定[2015a]、閣議決定[2015b]、閣議決定[2016]、西川和宏[2016] )。(2) 地方の地方創生総合戦略 国の動きを受けて、地方公共団体は、それぞれの地域の実情に合わせた「地方人口ビジョン」と「地方版総合戦略」を2015年度末までに取りまとめることに努めた。2016年度からは地方が主体となって具体的千葉商科大学名誉教授齊藤 壽彦SAITO Hisahikoプロフィール慶應義塾大学経済学部卒業。博士(商学)。千葉商科大学大学院客員教授。千葉商科大学経済研究所中小企業研究支援機構客員研究員。市川市市政戦略会議会長。専門は金融論。著書に『近代日本の金・外貨政策』(慶應義塾大学出版会)など。Ⅰ 地方創生戦略はじめに

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