View & Vision No42
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39トピックス42な事業を推進することとなった。 地方版総合戦略を地域経済・産業の活性化の側面から考察すると、それは、地方自治体が中心となりつつ、産官学金労言が一緒に議論し、地域にある資源を見つけ出し、それを適切なKPI(キー・パフォーマンス・インディケーター、Key Performance Indicators=重要業績評価指標)の設定とPDCA(plan-do-check-act)サイクルによって育成して、その地域における稼ぐ力を創出するなど地域の力が結集した成長戦略であるといえる(西川和宏[2016])。1 地域金融機関の地方創生への態勢整備 金融庁は、地域金融機関による企業の事業性評価に基づく融資、コンサルタント機能の積極的な発揮を促し、金融機関が地方創生に貢献することを促している。 まち・ひとしごと創生本部事務局[2015a]によれば、地域金融機関の約7割が、専門チームの立上げなどの地方創生に向けた態勢整備を実施していた。 金融機関の約6割が、経営戦略・経営計画に地域創生関連の項目・施策を盛り込んでいた。また、金融機関の約4割が、地方創生の推進にあたり、業績評価制度の見直しや進捗状況の管理体制の構築を行っていた。 このように地域金融機関は地方創生への態勢整備を行ったのである。2 地域経済活性化支援機構や政府系金融機関との連携 地方創生の促進は地域金融機関だけでできるものではない。各企業・産業における「稼ぐ力」の向上を図るために、地域金融機関は、地域経済活性化支援機構(REVIC)や政府系金融機関と連携している(堀本善雄[2015]、日本政策投資銀行[2015]等を参照)。3 地方創生戦略策定支援 地方創生のためには地域企業の活性化が不可欠であることから、政府は地域金融機関の地方創生への積極的な参画を要請した。 地域金融機関に期待されている役割のひとつとして「地方版総合戦略の策定」に向けた支援が挙げられる。国は地方への情報支援として地域経済分析システム(RESAS)を自治体に提供し、地方版総合戦略の立案に資するデータを提供している。金融機関も、地方自治体への情報提供が求められている。地域の実情を示すデータや成長を目指す企業の生の声の分析などを提供し、地域の企業の成長実現のため、産業・金融一体の視点をもって、地域の企業・産業の真の課題がなんであるかを抽出し、その処方箋など必要な施策を産官学金労言の議論の中で示す。こうして地域金融機関は地方創生戦略策定を支援することが求められた(西川和宏[2016])。 まち・ひとしごと創生本部事務局[2015a]によれば、2015年7月下旬~8月上旬において、地方版総合戦略の策定に向けて、金融機関の約8割が地方公共団体と接触し、この結果、ほぼすべての地方公共団体との接触が図られた。金融機関の約7割が戦略策定に関与した(予定を含む)。この結果、地方公共団体の約9割が金融機関からの参画を得ながら戦略を策定していた。また、金融機関の約3割が、地方公共団体と地方創生の推進に向けた連携協定等を締結していた。 地方銀行64行は、全国1765の都道府県・市町村のうち、1152の地方公共団体における総合戦略の策定に関与していた(2015年7月現在)(全国地方銀行協会[2015])。 まち・ひと・しごと創生本部事務局[2015b]に基づいて、地域金融機関の総合戦略策定支援の代表的な事例を紹介しよう。 北洋銀行は、域内の付加価値、地域産業の現状を分析し、地方版総合戦略策定のための基礎資料を提供した。千葉銀行は「『千葉県創生』戦略プラン」を発刊するとともに、各自治体に対して広域連帯を働きかけた。多摩信用金庫は自治体の求めに応じて、地域経済分析システム(RESAS)の活用に向けた勉強会を開催し、情報交換を通じて地方版総合戦略策定の進捗を図っている。4 地域中堅・中小企業・小規模事業者支援(1) 顧客企業に対するコンサルティング機能の発揮 地域金融機関は地域密着型金融を推進している。この活動は本業の融資活動にとどまるものではない。金融庁は、地域金融機関が、資金供給者としての役割にⅡ 地方創生において果たす地域金融機関の役割

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