View & Vision No42
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40トピックス42とどまらず、長期的な取引関係を通じて蓄積された情報や地域の外部専門家・外部機関等とのネットワークを活用して、コンサルティング機能を発揮することにより、顧客企業の事業拡大や経営改善に向けた自助努力を支援していくべきであるとしている。このコンサルティング機能に関して、金融庁の「中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針」は、地域金融機関が顧客企業の経営目標の実現や経営課題の解決に向けて、顧客企業のライフステージ等を適切かつ慎重に見極めた上で、当該ライフステージ等に応じ、顧客企業の立場に立って適時に最適なソリューションを提案することを求めた。 このために金融機関は、創業・新事業開拓を目指す顧客企業、成長段階における更なる飛躍が見込まれる顧客企業、経営改善が必要な顧客企業、事業再生や業種転換が必要な顧客企業、事業承継が必要な顧客企業のそれぞれにふさわしい提案をすることが求められた。 また実際にそれを行っている。金融庁が2015年4~6月に実施した地域金融機関の利用者等の評価に関するアンケート調査では、顧客企業の経営目標の実現や経営課題の解決を図るための方策の提案力について、十分あるいはおおむね十分と回答したものが27.5%あった(金融庁[2015])。(2) 事業性評価に基づく融資、事業への積極関与 金融庁は、地域金融機関に担保・保証に依存してきた融資姿勢を「事業性評価に基づく融資」に転換することを求めている(金融庁[2014b])。 担保に頼らない融資を実現するためには、借り手企業の将来キャッシュフローが確保されていなければならない。このためには、金融機関が事業を正確に把握することが不可欠となる。将来キャッシュフローが確実に確保されるように、金融庁は金融機関が法人経営者と共同して事業を安定、成長させていくべきであるとしている(日下智晴[2016])。(3) 「ローカルベンチマーク」の活用 経済産業省は2016年3月に「ローカルベンチマーク」を公表した(福本拓也[2016])。これは「産業構造や人口動態を踏まえて地域企業のビジネスモデルや生産性を比較・検討し、ローカル経済圏を担う企業に対する経営判断や経営支援等の参考となる評価手法である(経済産業省[2016])。それは、企業経営者と金融機関・支援機関の双方が同じ目線で企業の経営状態の把握を行うための基本的な枠組みであり、事業性評価の「入口」として期待されている。「財務情報」(6つの指標)と「非財務情報」(4つの視点)に関する各データを入力することにより、企業の経営状態を把握することで、経営状態の変化に早めに気づき、早期の対話や支援につなげていくものである。その利用者として中小企業支援機関、地域の企業や金融機関と関わっている税理士・会計士・コンサルタント等もあげられているが、本来的利用者として地域企業とともに地域金融機関が想定されている。ローカルベンチマークは、「産業・金融一体となった地域経済の振興を総合的に支援するための施策」であり、地域金融機関がこれを地域創生に活用することが期待されている(福本拓也[2016])。(4) 事業化・創業支援 地方創生のために金融機関には地域企業のライフステージに応じた融資等の取組が期待される。 事業化・創業支援については、技術力・販売力や経営者の資質等を踏まえて新事業の価値を見極めて対処しなければならず、リスクが大きいこの分野に関しては地域金融機関が融資することは容易ではない。地域金融機関は、公的助成制度の紹介やファンドへの出資を図りつつ、外部専門家等との連携を図りながら、信用保証協会の保証を受けて、事業立上げ時の資金需要に対応することとなる。 地域金融機関の地域創生に向けた事業化・創業支援の事例としては以下のものが挙げられる(全国地方銀行協会[2014]、まち・ひと・しごと創生本部事務局[2015b]。また金融庁[2013]、[2014a]も参照されたい)。 阿波銀行は、徳島大学と連携して、地域の中小企業の新規事業の事業化支援(つなぎ融資、新規事業融資を含む)を行っている。東京東信用金庫は、東京海洋大学や芝浦工業大学と連携しつつ、地元中小企業の技術を結集した新分野進出のための製品開発(海洋探査機「江戸っ子1号」の開発・事業化等)を支援した。地域には、優れた伝統工芸、質の高いリゾート、高級食材など、魅力ある資源が活用できずに埋もれている可能性がある。飛騨信用組合は、クラウドファンディング等の新たな資金調達メニューによる地域資源の開発および新事業の立ち上げ支援を行った。

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