View & Vision No42
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41トピックス42(5) 成長支援 企業が成長段階に入ると、地域金融機関は事業拡大のための資金需要に対応することが容易化され、信用のある企業に対して本来の融資ができるようになる。 地域金融機関は成長段階におけるさらなる飛躍が見込まれる取引先への支援を行った。この中には海外でのビジネス展開へのサポートがあった。 静岡銀行は、静岡県産業成長戦略に基づき、成長が期待される県内中堅企業への官民一体となった支援を行った。(6) 事業改善支援 事業が問題を抱えるようになると、地域金融機関は、貸付条件の変更に応じたり、新規の信用供与を行ったりし、さらに経営再建計画の策定を支援(顧客企業の理解を得つつ、経営再建計画を策定)し、実効性のある課題解決の方向性を提案する。 七十七銀行は外部専門家の本部駐在による取引先の経営改善計画策定支援を行うとともに、経営力強化保証関連融資を行った。足利銀行は、外部専門家との連携により、経営改善計画策定支援を進め、また経営改善に資する新規融資も行った。(7) 事業再生支援 地域金融機関、地方銀行は事業再生支援も行った。 北都銀行は日本政策金融公庫・信用保証協会と連携して、老舗料亭を再生させた。七十七銀行は地域産業を支える造船会社に対する事業再生支援を行った。金融機関による債権放棄を含む事業再生計画に関係全金融機関が同意した。また、東日本大震災事業者再生支援機構が出資等による企業支援を決定した。常陽銀行は、東日本大震災事業者再生機構を活用した事業再生支援に取り組んだ。同機構は貸出債権の一部買取を通じた過大債務の除去に応じた。姫路信用金庫は、バブル崩壊後資金繰りが逼迫した金属加工中小企業の貸付条件の変更に応じ、経営再建を支援し、さらにその後、貸出金をサービサーに売却することによっても事業再生を支援した(『事業再生と債権管理』第153号、37~39ページ)。百十四銀行は医療機関の事業再生を通じて地域経済の活性化に寄与した。伊予銀行はABL(動産・債権担保融資)を活用して老舗酒蔵を再生させた。(8) 事業整理(円滑な退出)支援 地域金融機関は経営が行詰った企業の事業整理をした。 すなわち、山形銀行は、老舗企業に対する再生支援協議会を活用した不採算部門撤退・業種転換を助言し、また事業再生に向け、資金面での支援も行うこととした。北九州銀行は事業転換に関する支援に取り組んだ。(9) 事業承継支援 地域金融機関は事業承継支援による地方創生支援も行った。全国地方銀行協会[2014]によれば、このような事例として、M&Aによる事業承継支援、事業承継に係る株式取得資金の融資実行、取引先の事業承継支援、次世代経営塾の創設、社長交代期にある企業の自社株承継対策等の支援などが挙げられる。5 農林水産業の成長産業化 西日本シティ銀行は、第1次産業者が第2次産業や第3次産業にまで踏み込む(農家や漁業者が加工・流通業に乗り出したりその事業者と連帯したりする)6次産業化を支援するために、農林漁業成長産業化支援機構と連携して、「NCB九州6次産業化応援ファンド」を設立し、6次産業化事業体に出資した。鹿児島銀行は、オリーブ栽培農家からオリーブを買い取り、これをオリーブオイルに加工して販売する会社を設立するために、企業誘致を行い、これによる新産業育成を通じて地域雇用の創出に寄与した。 上術のように、地域金融機関は地方創生戦略策定支援を行うとともに、地域の個別中小企業等を支援したのである。6 面的地方創生支援 地域金融機関は、地域の面的再生に向けた取り組みに積極的に参画することが期待されている。利用者や関係機関との日常的・継続的な接触を通じて得られる各種の地域情報を収集・蓄積しつつ、地域経済の課題や発展の可能性を把握・分析し、そのうえで、地域金融機関は、自らが貢献可能な分野や役割を検討し、地域の面的再生に向けて積極的な貢献をすることが重要であるとされている。 面的地方創生支援は個別の企業、業者への融資ではない支援形態をとるもの(グループなどに対する支援)で、具体的には、観光地域づくり、まちづくりなどを地域金融機関が支援するものである。その代表的な事例を挙げてみよう(まち・ひと・しごと創生本部事務局[2015b]などを参照)。

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