View & Vision No42
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42トピックス42(1)観光地域づくり 八十二銀行は地域経済活性化支援機構と連携して、観光地として有名な長野県山ノ内町をパイロット(地方分権特例制度)地域として、観光を軸とした地域活性化に取り組み、観光地まちづくりのモデルの構築に努めた(『事業再生と債権管理』No.153、19~24ページも参照)。観光関連産業を強化する地域における金融機関の連携もみられる。瀬戸内が国内外の多くの人から選ばれる地域(ブランド)となるよう、瀬戸内地域の7行の地域金融機関と日本政策投資が連携して瀬戸内ブランド推進を支援した。(2)まちづくり 東北銀行は岩手県紫波中央駅前都市整備事業(通称;オガールプロジェクト)を支援した。西部信用金庫は地域を支える街づくりを支援した。大阪シティ信用金庫は、地方公共団体大阪事務所や大阪に事務所を有する地方の信用金庫と連携して、大阪の商店街を中心とする商店街活性化事業に取り組んだ。1 地方創生への取組みにおける課題 地域金融機関の地方公共団体との連携(地方版総合戦略の策定への関与)にあたっては、金融機関側に悩みが多く見受けられた(まち・ひとしごと創生本部事務局[2015a])。戦略策定の準備段階(接触段階)では、地公体からは、事業自体がほぼ決定した段階で意見をもとめられることが多く、事業化する前の段階で議論に参加できていない、という意見があった。戦略策定への関与の広がりを背景に、戦略の策定段階(関与段階)で金融機関側の悩みが増えた。すなわち、次のようなことが指摘されている。①行政区域をまたいだ経済圏が形成されているため、金融機関が広域連携のコーディネーター役として機能発揮したいが、そのためには地公体の理解・協力が欠かせない。②金融機関に対する期待が過大(小規模な金融機関では地公体の期待にすべて応えるのは困難)である。③過去に例を見ない取組みであるため、戦略策定レベルで金融機関とどのように連携したらよいのか模索している地公体がある。④地公体の全体を企画する部署と個別事業を企画する部署が分散しているため、やりとりに手間がかかる。⑤地公体で抱える課題やニーズが異なり、個別対応が必要なことから、すべての自治体へ支援を行うのが難しい、など。 一部の地公体側からも金融機関との連携に関して次のような課題が挙げられていた。①計画策定主管部署に金融機関との直接の接点・情報がなく、金融機関の保有する機能の把握が課題である。②計画策定主管部署と金融機関と接点のある県庁内組織との連携による情報収集が課題である(関東財務局「地方公共団体、地域金融機関及び地域の産業界による地域経済活性化に向けた考えや動きなど」2015年6月)。 金融庁の「金融仲介の改善に向けた検討会議」第1回会議(2015年12月21日)では、以下のような意見が出ていた(西田直樹[2016])。① 地域銀行は、地域のグランドデザイン作りと自らの業務・ビジネスモデルである企業・産業支援を連携させて地方創生に貢献するという意味で、極めて良いポジションにいるにもかかわらず、現状はその役割を果たせていないところが多い。② 中堅・中小企業の中には、経営課題について良質なアドバイスが提供されれば、状況が劇的に改善される可能性のある企業が多いが、金融機関はあまり企業経営者との間で、特に経営について深い話ができていない。③ 地域金融機関には企業へのコンサルティングの提供が期待されているが、社会、経済、ビジネスが複雑化し、求められるアドバイスのレベルが上がってきている中、質の高い適切なアドバイスが十分にできていない。④ 事業性評価に基づく融資をすべきだというメッセージが金融庁から出ており、本気でやっている金融機関の地元では結果が出始めている。こうした取組みは、組織的、継続的に行う必要がある。⑤ 地域金融機関には、信用保証協会を利用した融資先企業に対する事業再生・経営改善支援に真剣に取り組む姿勢がみられないところもある。 このように地域金融機関の中堅・中小企業・小規模事業者への融資やコンサルティング活動についても地域創生への取組み上の不十分性がみられるのである。 創業・新規事業の支援に当たっては、すでに一定の実績を有する企業の事業価値や将来性の見極めなど、金融機関として通常求められる目利き能力だけでなⅢ 地域金融機関の地方創生への取組みにおける課題

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