View & Vision No42
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3特 集大学のマーケティング力で市場をつくる ―産学連携による商品開発―42ジウムで得られた貴重な知見を広く共有することを目的としている。 1本目では、株式会社エスト・コミュニケーションズ代表取締役の弓削徹氏が、中小企業の商品開発の課題が「商品企画テーマの発見」という川上と、「販路開拓」という川下にあることを示している。その上で、商品開発には「切実な」ニーズが重要であること、産学連携における学生力を活用することで、川上と川下のボトルネックに大きな成果を上げることができるのではないかとの可能性を、産学連携の実例とともに考察している。 2本目は、産学連携のトップランナーである近畿大学からリエゾンセンター長の宗像惠先生にご寄稿いただいた。産学連携には大学の基礎研究の充実が必須であり、学内に競争的環境を作り、教員評価の仕組みを変えていくことも重要であると述べている。リエゾンセンターを核とした産官学連携の推進、文理融合型産学連携の重要性も紹介している。特にリエゾンセンターが行っている産学連携の「相談窓口の強化」、「リエゾンカフェ」の設置、「研究シーズの積極的発信」、「知財管理の強化」といった各種取組は大変興味深い。「産学連携は実学教育の最前線」というキーワードとともに、産学連携が大学教育において大きな役割を果たしていることが示されている。 3本目は、佐竹経済研究所代表の佐竹恒彦氏による「産学官連携と中小企業支援」に注目した寄稿である。中小企業には、若い経営者や従業員が不足しているという大きな問題があり、産学連携によってそれを解決できる可能性を示唆している。さらに千葉商科大学で取り組んでいる産学連携プロジェクトの例「SANUSチョコレート」を紹介し、「産学官連携による(中小企業)支援スキーム」を提案している。 4本目では、千葉商科大学 人間社会学部教授の和田義人先生が人間社会学部で取り組んでいる産学官連携の事例「銀座芋ROCKプロジェクト」を紹介している。本プロジェクトは、ソーシャル・ビジネス、“人的(顔の見える)ネットワーク”構築、サスティナビリティを実現しようとしている活動であり、産学連携が目指すべき一つの形であると考える。イマドキの学生に対して、産学連携が教育手法として有効であるということを具体的な事例とともに考察している。 以上、本特集に寄稿いただいた4本の論説は、すべて産学連携の現状の課題やその意義に対して、何らかの答えを提示・考察しているものである。今後、大学が地域と連携し、地域を活性化していくために産学連携は欠かせないものである。本特集が産学連携に関わる(あるいは関わろうとしている)多くの皆様に対して、その活動の助けとなることを期待している。千葉商科大学商経学部教授 経済研究所長橋本 隆子HASHIMOTO Takako

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