View & Vision No42
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4842「大人や企業が考えるほど若者が関心を寄せない サービスについての研究」―その問題意識と研究概要― リサーチ&レビュー吉田プロジェクト吉田優治、今井重男、宮澤薫、松本大吾、西根英一1.共同研究のきっかけは公式サポーター企業との関わりから 共同研究者5名が在籍する「サービス創造学部(Faculty of Service Innovation)」は、2009年4月にサービス創造人材(Service Innovator)の育成を目的に千葉商科大学の3番目の学部として設立された。残念ながら、当時も今もサービスやサービス創造に関する本格的な研究は、国内外を問わず十分に蓄積された状態とは必ずしも言えない。そうした状況のなか、学部に関わる教員たちは、経営学やマーケティングなどの各自の研究領域からサービスおよびサービス創造に関する研究を続けている。 そうした取り組みのなかで、学部教育を力強くサポートしてくれる「公式サポーター企業」57社からも研究や教育にとっての多くの手掛かりを得てきた。今回の共同研究は、業界有数の企業においても20歳前後の若者市場で苦戦していることについての我々の率直な驚きと研究者としての問題意識から始まった。2.大人や企業が考えるサービスに若者たちが反応しない 日頃学生たちに接している大学教員にとっても、自分たちが考えるほど若者たちの関心や興味を把握することは難しい。例えば、連携する地元プロ野球球団の内野自由席2800円のチケットを200枚希望者に配布すると学内掲示しても希望する学生は申し込み締切日まで30名ほど。またインターネットオークションで数万円のプレミアムが付いた夏フェスのチケット20枚でさえ学生から数名の応募があっただけ。教員が苦労して交渉してきた有名企業へのインターンシップ募集も思うほど学生からの反応は良くない。さらに学部が提供する企業連携プログラムやキャリア支援プログラムにも私たちが考えるほど学生の参加意欲は高くない。実際、学生たちのためになると考えて提供する多くのサービスが、若者たちから受け入れられないという状況を我々はしばしば経験する。 このことは業界有数の企業の場合でさえ例外ではない。明確な経営戦略と戦術策定のもと、十分な市場調査を行い投入した商品やサービスであっても若者市場から支持されないことがしばしばある。そして、そのことが企業経営の今後の展開に大きな影響を与える可能性があることを複数の公式サポーター企業からしばしば聞かされる。 これまで全国的に業界を牽引し、今でも業界で大きな売上高を誇る企業が若者市場に苦戦する状況が、サービスやサービス創造を考えるにあたり有力な手掛かりになるとの基本認識のもと我々は「大人や企業が考えるほど若者が関心を寄せないサービスについての研究」をスタートさせた。3.経営戦略、消費者行動、コンサルティングからアプローチ 「大人や企業が考えるほど若者が関心を寄せないサービス」についての原因が、「若者たちの価値観や関心の多様化」、「経営戦略や戦術策定の誤り」、「広報活動の不徹底」、「不十分な営業活動」、「企業の成功体験へのこだわり」、「大人と若者・企業と若者の意識の違

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