View & Vision No42
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4942い」、「企業イメージや企業ブランドの低下」、「競合他社の市場優位性」などにあることが容易に想像できる。 しかし、今回の共同研究で私たちは、マネジメント(経営戦略)、マーケティング(消費者行動)、コンサルティングというそれぞれの専門領域からアプローチをするとともに、その研究成果を持ち寄り議論することを通じてこのテーマについてのさらなる理解を得たいと考えている。そしてそのことがサービスやサービス創造の一般理論構築の手掛かりとなる可能性も検討したいと考えている。 吉田と今井は、企業の主体的経営行動のマネジメント視点から、宮澤と松本は若者の消費行動の視点から、西根は、企業経営にアドバイスを提供するコンサルテーションの視点から問題に接近することになった(図参照)。以下では3つの研究視点について、それぞれ今後の展開可能性を具体的に説明する。 なお、今回の共同研究は、学部教育に協力いただいている公式サポーター企業「ぴあ株式会社」(以下、「ぴあ社」)を中心に幾つかの企業からの協力を得て進められる。 4.経営戦略研究の視点からのアプローチ 経営戦略の視点からテーマに接近する吉田と今井は、まずは次のような企業の経営戦略や戦術について検討する予定である。 「企業が若者市場にどのような戦略・戦術を策定しているのか、それはどのような特性を持った若者たちなのか」、「経営戦略において若者市場への取り組みはどのような位置づけなのか」、「具体的にどのような戦術をどのように策定しているのか」、「若者市場への取り組みの成果をどのように評価しているのか」、「競合他社の動きをどのように把握しているのか」、「若者市場の将来性をどのように捉えているのか」、「今後の若者市場へどのような戦略・戦術を策定しているのか」。 以上の課題に対する取り組みの端緒として、まず「ぴあ社」の経営戦略をもとに議論を展開したい。 雑誌『ぴあ』は、現代表取締役社長である矢内廣が中央大学在学中の1972年7月、アルバイト仲間7人と創刊した。「情報誌」という言葉の無い時代に、映画・演劇・コンサートといったエンターテインメント情報を網羅した月刊情報誌として始まり、それは文化・街歩き・デートのよすがとして、当時の若者たちに絶大なる支持を得る。そして『ぴあ』創刊2年後に、「ぴあ株式会社」が発足する。「ぴあ社」によれば、その後、「ぴあ」は出版業から脱却し、情報伝達業へと変貌していく。すなわち、チケット販売ビジネスへの参入、インターネット事業の展開など、取り扱う範囲の拡大である。 こうした「ぴあ社」創業40有余年を振り返り、われわれは「ぴあ」のビジネスに関して、対極的な感想を抱く。1つは「ぴあ」の自認する情報伝達業のビジネスモデルが大きく変わったという感想であり、もう1つは「ぴあ」は大して変わっていないのではないかという感想である。こうした感想が生じた理由は、同社のHP「事業内容」に載る「チケット販売」、「ソリューションビジネス」、「コンテンツビジネス」、「メディア展開」といった、如何せん捉えどころのない事業内容を見ても理解できる。また、この捉えどころのなさが寄与して、「ぴあ」のサービスを研究した例がなかったのではないかと考える。 そこで本研究では、「ぴあ」の情報伝達業について考察するために、同時代感覚でその軌跡を追おうと思う。具体的には、雑誌『ぴあ』創刊、「ぴあ社」創業以来の、それらを扱った新聞記事・広告を渉猟し追うのである。新聞記事は当時の記者が毎日書き続けたドキュメントであり、他方、新聞広告は「ぴあ」が消費者に訴求したいことや受け入れられるであろうと予想した世相を映す鏡である。新聞記事・広告をこのように規定した図:吉田プロジェクトにおける3つの研究アプローチ

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