View & Vision No42
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5042うえで、折々の新聞記事・広告を拾いながら時代の移り変わりを探索し、情報伝達業「ぴあ」がたどり、そして向かう先を論攷したい。5.消費者行動研究の視点からのアプローチ 宮澤と松本は消費者行動研究の視点から本研究プロジェクトに取り組む。 大人が考えるサービスがなぜ若者に受け入れられないのか、という本研究プロジェクトの問題意識を追求していくためには、若者という消費者を改めて深く分析していく必要があるだろう。 例えば、太田(2015)は、若者の消費について、自分にとって大切ではない分野の商品・サービスには余分なお金を出さないが、その一方で「趣味」を重視しお金も使っていることから、若者一人の中でお金を出す分野とできるだけ安価に済ませようとする分野に二極化していると述べている。 また、手塚(2012)は、若者の消費について定性調査のデータをもとに、40〜50代のかつての若者と比較しながら述べている。かつての若者が、約束された未来を目指して今日を生きるという特徴を持つのに対し、現在の若者は過去に強い関心とこだわりを持ちながら、それを更新するように今日を生きるという。過去から今日までを途絶えることのない連続した時間として生きようとする若者の意識は、今日よりも明日の方がよりよいことが約束され、未来のみに目を向けて生きてきた成長期の若者の意識とは時間軸において全く異なるものである(手塚 2012)。 原田(2014)は、現代の若者の中でも特に若い男子に焦点を当て分析することで、「女子力男子」という特徴を提示している。女子力男子とは、高い女子力を備えた男子である。例えばスイーツを手作りする、化粧ポーチにハンドククリームや頭痛薬を入れて持ち歩く等、これまで女性がやっていると思われた行動をごく当たり前に日常に取り入れて行っている男子を指している。 このように、若者の消費に関する問題意識はビジネスの領域を中心に議論が行われ、個人内二極化、かつての若者との差、男子の女子化などのキーワードが見られている。一方で、学術的な領域において、理論背景に基づき若者の消費動向を探求した研究はあまり見られない。そこで本研究では、ビジネスの領域で定性的に把握されている若者の消費意識・行動を自己呈示理論に基づき定量的に紐解くことを目指す。 自己呈示とは、他者が自分に持つ印象を自分が想定している方向に操作したいという欲求と行動として説明される(齊藤 2004)。例えば、買い物時に他者が同伴することで予定していた金額よりも高い支払いをしてしまう(e.g., Kurt et al. 2011)、衝動購買が促進される(e.g., Luo 2005)などの行動が確認されている。現代の若者世代が、常にSNS等で他者とつながっている状況だということを考えると、消費行動を検討する上で、他者からの視線は極めて重要な要素である。 さらに、他者に呈示したい自己は、男女によって異なることも分かっている(鈴木・神山2003; Kurt et al. 2011)。原田(2014)が述べた通り、かつての若者世代に比べ、現在の若者世代で、より女性性の強い若者が相対的に多くなっているとすれば、両世代の間には少なからず消費に関する志向に差が生じていると考えることができるだろう。 以上を踏まえ、今後の研究では男性性、女性性による自己呈示の差に着目し、若者世代の消費志向を明らかにしていくことで、若者が本当に求めるサービスを検討するための示唆を得たいと考える。6.実務におけるコンサルテーションの視点からのアプローチ 西根はコンサルティング実務の視点から本研究プロジェクトに取り組む。 若者向けサービス創造の“黄金律”(ゴールデン・ルール)を策定することが当研究のKGI(Key Goal Indicator)であり、その解を求めるためのアプローチとして、「若者は何に感動を消費するのか?(以下、「感動消費」)」をKPI(Key Performance Indicators)の一つに設定し、今年度の研究テーマとする。 昨年2015年度の予備研究では、「サービスの価値は“感動消費量”に相関する」という仮説を導いた。若者の「感動消費」に係る変数としては、literacyスケール(知識度)、insightスケール(関心度)、sensoryスケール(五感度)等があることを先行研究やビジネス事例から見出し、各スケールの数値が異なるモノ(商材、素材)やコト(項目、言葉)を作為的に(≒クリエ

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