View & Vision No42
54/62

52421 シンポジウムの目的 私たちは「観光を通じての地域活性化―千葉県を例に」というテーマで2015年から研究プロジェクトを実施してきた。そして1年目のまとめと今後の研究の方向性を探るために、経済研究所主催として「千葉の里山の魅力を探る」と題したシンポジウムを2016年3月12日に千葉商科大学1号館1101教室で実施した。シンポジウムは公開とし、一般市民や学生が約50人参加した。 私たちのプロジェクトでは、千葉の中でもJR久留里線とその沿線に焦点を当てて研究活動を行ってきたが、その過程で久留里線沿線に広がる里山の存在に気づかされた。久留里線は木更津〜上総亀山までの32.2kmのローカル線で、途中に久留里という城下町がある。久留里線は当初田んぼの中を走っているが、横田あたりから丘陵地帯の裾を走るようになり、久留里から上総亀山までは里山の中を走っている。 他のローカル線の例に漏れず、久留里線は沿線の人口減少や自動車の普及、さらには少子高齢化の影響などで乗客が減少し、それに合わせて列車の本数が削減されて一層乗客減少を招くという負のスパイラルに陥っている。 しかし、我々が学生達と調査を行ってみると、久留里やその周辺の里山にはたくさんの魅力があり、その多くは現代社会の大都市住民が必要とする「いやし」や「健康」などに関するものであることがわかった。特に里山は豊かな自然、歴史、伝統的な生活習慣などが残っており、それを掘り起こして活用することで十分に地域活性化に結びつけることができると感じたのである。 こうした発見を踏まえて、シンポジウムでは上総地域の里山活動を行っている5人の方々をお招きし、我々の活動も含めて里山の魅力をシンポジウムの参加者と共に共有することを目指して報告と討論を行った。2 基調報告 シンポジウムは人間社会学部の佐藤哲彰専任講師の司会のもとで行われた。最初に、主催者である経済研究所所長の商経学部教授上山俊幸氏の挨拶があり、本プロジェクトの意義についての話があった。その後研究プロジェクトの代表である鈴木から「里山の魅力とは何か」と題して基調報告があった。その要旨は以下の通りである。 そもそも千葉県は山間部の標高が低く、そこには古くから人間が奥まで深く入り込んで暮らしており人間生活と密接に結びついていた。つまり千葉の山間部は里山状態になっていたということができる。千葉県の貝塚の分布と海岸線の移動をみると、縄文時代に人々が生活していた場所は現在よりかなり内陸部に入ったところであった。それがのちに海岸部が隆起して海岸事業レポート2016年3月12日経済研究所公開シンポジウム「千葉の里山の魅力を探る〜JR久留里線沿線を中心に」について千葉商科大学人間社会学部教授鈴木 孝男SUZUKI Takaoプロフィール1947年、茨城県日立市で生まれる。東京都立高校、高専教員を経て、1993(平成5)年に千葉商科大学商経学部教員。2014年から人間社会学部教員。2016年から地域連携推進センター長。専門は中小企業論、地域産業論。主な業績は、『信用金庫と中小企業のイノベーション』税務経理協会、2013年。「東京の古い産業集積地域におけるイノベーション」商工総合研究所『商工金融』2013年5月号、『経済環境の変化と地域経済』国府台経済研究第17巻第1号(2006年)ほか。

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

page 54

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です