View & Vision No42
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554212年前に旧夷隅町(現在いすみ市)に別荘を購入し、現地で街づくりに参加するなかでこの地の魅力に惹かれ、8年前に移住した経歴を持つ。現在は都内での仕事をこなしながら、いすみ市ではいすみ自然エネルギー株式会社役員として、地元の経済活動にも参加している。 高木氏が関わっている農園会社は、もともとブルーベリーの栽培を行っていたが、太陽光線がきついとブルーベリーの生育に悪いことから、経営者の藤江氏がソーラーパネルを日よけとして配置して、両方を生かす事業を始めたのである。このような形態を「農園型ソーラーシェアリング」と呼んでいる。 太陽光発電は最近空き地の有効利用策として利用が進んでいるが、パネルを敷き詰めることで景観に悪影響を及ぼすとして評判が悪い。いすみ自然エネルギー株式会社のやり方は、自然と景観の双方を生かす方法として注目されている。 その他同社では木質系バイオマス(廃材を利用した発電事業)と廃校になった公立学校を結びつけて温浴施設を作る事業に取り組む予定にしているという。5 里山の魅力をどう生かすか-討論 以上の5人の方の取り組み事例に加えて、本学人間社会学部の鎌田光宣准教授が久留里線プロジェクトで行った高大連携活動を紹介した。鎌田准教授は袖ケ浦高校の情報コミュニケーション学科の生徒達と久留里線の魅力をツイッターで発信する取り組みを行い、そこに「きはいさおちゃん」(久留里線で使われているキハ130系というディーゼルカーを中心に地元のダムや川などを合わせて組み立てたもの)というご当地キャラクターを登場させて100人以上のフォロワーを呼び込んだという。高校生の視点や柔軟な発想力を地域活性化に結びつけた取り組みとして評価できる。 その後、すべての報告者が参加して、里山の魅力をどう生かすかについての討論を行った。そこでは、「里山」について地元の人と外部の人とで受け止め方が異なること、地元の人と外部の人の連携が重要であること、ライフスタイルに共感する人が自然に集まることが大切、里山の自然に触れてそこに深い関わりを持とうとする人が出てきているので、そのネットワークを大切にすることが重要、里山との関わりに多様性が求められる、里山を材料にした地域活動で人を呼ぶことが定住につながる、などの意見が出された。 若者に期待することとしては、若者の思い切った提案や活動を期待する、遊び心を持って里山に来てほしい、若者の情報発信力に期待、地元高校生が地域に関心を持つことに期待する、などの意見が出された。 当日、千葉県報道広報課千葉の魅力発信室の高橋輝子室長と榊田善啓主幹、木更津市企画課の中村伸一副課長が参加してくれていたので、それぞれ発言をしてもらった。 それによると、県と千葉商科大学が連携し、地元自治体や関係者が一緒になって魅力発信に取り組めたことに感謝している。千葉の里山に多様な魅力があることがわかってよかった。ローカル線を切り口にした取り組みができた、上総丘陵が都心の方々にとって魅力があることがわかった、地元がどう受け皿を作るかが課題、今回久留里線プロジェクトに地元の高校生が参加したことは大きな意義があるなどのコメントがあった。  最後に人間社会学部の犬塚先教授がこのシンポジウムを以下のようにまとめた。里山に対して多面的な取り組みがあることがわかった。今回のように大学生や高校生が参加することは重要である。特に地元の高校生にとって、自分の将来の人生設計に里山が何らかの意味を持つことができるかどうかが里山を中心とした地域活性化の鍵を握るといってもよいのではないか。 今回のシンポジウムにおいて、上総地域を含む千葉県の里山や田園では、東京からの距離が近いことを生かした多様な活用方法があることが指摘された。地元を中心にどう反映させるかを課題としてシンポジウムが締めくくられた。 

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