View & Vision No42
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4特 集大学のマーケティング力で市場をつくる ―産学連携による商品開発―42特 集大学のマーケティング力で市場をつくる ―産学連携による商品開発― なぜ、ものづくり企業は新製品を市場に送り続けなければならないのか。 そこには、商品ライフサイクルが短命化し、一つの製品や技術で稼ぎ続けることがむずかしいという事情がある。また、新しい技術を新興国企業がすぐに模倣するため、昨日と同じ場所に立っていては競争力が保てないという現実もある。 しかし、多くの中小製造業において、商品開発は成功確率の低い、困難なプロジェクトになりがちだ。商品開発のプロセスを川の流れに例えたとき、とくに川上の「商品企画テーマの発見」と川下の「販路開拓」という、入口と出口の部分に課題がある。 テーマの発見。つまり、どんな製品をつくれば売れるのか──。多くの企業が、ここでつまずいてしまう。製品や技術の方向性を定めることは、企業の死命を決することでもある。シャープが台湾企業に買収されたのも、液晶技術の一本足打法という判断がよくなかったのだとされている。 アイデア発想に悩む担当者は世の書籍に頼ったりもする。そうした指南書によくあるパターンは、ヒット商品分析本だ。過去のヒット要因を知って自社の企画に生かすための本だが、なかなか思い通りにいかない。それはあくまで取材記事であり、実態を写しとったものではないからだ。 例えば、本当の要因は社外秘なので明かせなかったり、偶然のヒットゆえ担当者も理由をつかみかねていたり、あるいは社内で出る杭にならないよう控えめな情報しか語らなかったり、1年以上を経て記憶が都合よく書き換えられていたり、果ては実務に携わっていない上司が取材対応するケースもある。これに対してメディア側はドラマを求め、失敗と成功のジェットコースターを演出しようとする。かくして、本質とはかけはなれた開発ストーリーができあがるわけだ。 このほか、開発の手順を解説する本や、テーマ発想に際しては頭を柔らかくしてあらゆる角度からアイデアを得るべしという、「それができれば苦労はないのだが」とつぶやきたくなる本もある。このように、書籍情報は限定的にしか役立たない。そして、こう述べると「では、マーケティング調査をしよう」となる。  筆者はよく「マーケティング調査で得られるのは3つの石ですよ」とお話しする。一つは、無価値な路傍の石だ。例えば「価格は?」と訊くと「安い方がいいですね」。「サイズは?」と問うと「小さい方がいいです」、「このオプションは?」と水を向けると「あったほうが…」と答える。つまり、訊かなくてもわかっているよプロフィール製造業のマーケティングコンサルタント。法政大学法学部卒。日本の土台である中小製造業を、その下から支えるコンサルタントとして活動。 [ノートパソコン]の名付け親。著書に「転がす技術 なぜ、あの会社は畑違いの環境ビジネスで成功できたのか」日刊工業新聞社、「地方創生! それでも輝く地方企業の理由」KKベストブックなど。商品開発のボトルネックとは?1弓削 徹YUGE Toru株式会社エスト・コミュニケーションズ代表取締役産学共創マーケティングの時代大学と中小製造業〜その補完しあう関係調査で得られるのは3つの石2

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