View & Vision No42
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6特 集大学のマーケティング力で市場をつくる ―産学連携による商品開発―42須の製品だ。 一方、東京墨田区の岡野工業がつくっているのが、[痛くない注射針]。健康な人なら注射することなど1年に1度あるかないかだが、これは毎日の注射が必要な糖尿病患者のための注射針だ。毎日の注射が痛いのか、痛くないのかは、切実な問題だろう。 また、滋賀県は長浜の一助朋月が制作しているのは[着られる甲冑]。これまでも着用できる甲冑はあったが、金属製で重く、体に合わないサイズをムリに着用することも多かった。同工房の甲冑は、オーダーワイシャツのようなやりとりで体にフィットする寸法の甲冑が注文でき、素材もFRP樹脂や新素材などを駆使しており、軽いけれど見た目は重厚。 それでいて価格はリーズナブルであるため、全国から注文が殺到して納品は4〜5ヵ月待ちとなっている。「誰がそんなに注文を?」とお思いかもしれないが、いまは歴史ブーム、歴女ブーム。祭事の武者行列に大好きな武将の甲冑で参加したい、という切実な願いを満たす商品なのだ。一助朋月の着られる甲冑 自社の得意な技術を、成長分野へ当てはめてテーマ発想する試みはよく見られる。しかし、成長産業であるため新規参入が相次ぎ、激しい競争に巻き込まれてしまうケースも少なくない。 自社にとって本当の有望市場とは、成長度合いにかかわらず、「供給以上の需要がある市場」のこと。だから自社の得意技術を当てはめる先は成長市場ではなく、切実でニッチな市場のほうがよい。成長する市場、大規模市場には、必ず大手企業が参入し、その次には新興国企業がやってきて市場を壊してしまうからだ。自社の技術を当てはめて切実な開発テーマを発想するとき、切り口としては次の7つがあるので挙げておく。  ①苦痛・不快を取り去ってあげる  ②B2Bの課題を解決する  ③美しさへのこだわりに応える  ④オーダー・1点モノにする  ⑤趣味・萌えのニーズを満たす  ⑥健康・生命の危機を救う  ⑦環境・社会貢献にコミットする もう一方の課題、販路開拓についてはどうか。新製品のセールスポイントが明確であれば、それを切実に欲しがってくれるお客様はどこにいるのかを探せばよい。見込み客のいる場所がわかれば、どの媒体にどんな広告を打てばいいのかが明確になる。この販売促進の段階で勝つために活用すべき3つの要素がある。それが、「デ・キ・物」だ。中小製造業の販促3要素よいモノが売れる世の中なら苦労なし5

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