View & Vision No42
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7特 集大学のマーケティング力で市場をつくる ―産学連携による商品開発―42 まず「デ」とは、「デザイン」のこと。工業デザイン、パッケージやウェブのデザインなど、目で見てすぐに伝わるスピーディなツールだ。最近では「デザインがいいから買ってしまった」、「CDをジャケ買いした」などの行動もよく聞く。機能性で選ばれる製品も、市場が成熟するにしたがってデザインが問われることになる。 例えば太陽光パネルは発電効率で評価されてきたので、色はブルーしかなかったが、あるメーカーが「ウチはキレイな真っ黒です」と訴求しはじめ、また別のメーカーがガラスで挟んだ「ライトスルータイプ」を発売し、そして伝統的で美しい屋根瓦と見分けのつかない製品も現れ、あのグッドデザイン賞も数年前に環境製品部門を設けるにいたり、環境製品もデザインで選ばれるフェーズに入ったのだな、ということが理解できる。 工業デザインも社内発注ではなく多少のコストをかけて外注をすることで、注目されてメディアに取りあげられたり、販路が広がっていく可能性もある。 次の「キ」は、「キーワード」。ネーミングや社名、キャッチコピーなど言葉で表されるものだ。いまはどんな商品もネット検索して使用者のレビューを読み、価格を比べ、そして自分も購入して、その使用感想をFacebookに書き込むという時代。そのスタート地点にある武器がキーワードだ。 リアルな社会でクチコミが起こるときも、映像は伝えづらいので、「○○○、買った?」などの言葉で語ることになる。このように、キーワードがかつてなく重みを持つ時代がいまだ。 最後の「物」とは、「物語」のこと。私たちは子供のときに読み聞かせをしてもらっていたあの頃から、物語が大好きだ。テレビドラマも、人気の俳優・女優が出ているから視聴率が高い、というよりもストーリー展開が面白いので視聴率が高くなり、出演していた俳優・女優がそのあとで人気になる、という順番ではないだろうか。 企業が物語を上手に活用することができれば、記憶してもらい、指名買いしてもらい、ファンになってもらい、そして友人にクチコミをして宣伝までしてもらうことも夢ではない。以上3つの要素、「デ・キ・物」を覚えていただき、活用してもらえれば幸いだ。 商品開発の川上と川下のボトルネック。この、前門と後門に潜む虎狼に対して、学生力とそのセンスを生かすことができれば、大きな成果が見込まれる。これまでの技術開発パートナーとしての産学連携から、マーケティングというソフトウェアで価値を生む産学共創へ。そこには、どのようなメリットがあるのかを整理すると次のようになる。①異なる組織の知見を活用できる  →商品企画テーマの発見、販路アイデアの獲得②次代を構成する若年層の考えに触れられる  →行動観察調査など③理論構築や専門的・客観的データをとれる④マーケティング課題は専門分野を問わない⑤企業同士より連携しやすい⑥社員採用につなげることができる ここで、筆者が関わってきたマーケティング分野での産学共創の事例をご紹介したい。●事例1 学生力で市場を揺さぶる いささか旧聞となる事例だが、これは筆者が20年前から学生力の活用に取り組んできたことの証拠となるケースでもある。オフィスのPCなどのクリーナーを開発した化学メーカーから、何か変わったキャンペーンはできないかという依頼があり、提案したのが本件だ。 大学生に販売促進のマーケティング企画を募ることで、社会人予備軍のターゲットへ認知を広めていく。さらに、企画発想のために学生たちが店頭へ出かけていって現場を取材し、店舗の人間と会話をする。店舗側は「変わったことをはじめたな」と、否が応でも新商品を刷り込まれていく。 こうした影響のさざ波が起きるところを評価され、企画は採用された。実際に店頭で話題となり、メディアにも取りあげられたほか、大学側もおもしろがって指導教授がゼミぐるみで応募してくれたケースも多く見られた。言葉はわるいが、大勢の学生が人海戦術のように動けば社会現象となることもある。技術連携からマーケティング共創へ6

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