View & Vision44
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8特 集女性の活躍が地域社会を変える44なんだと思うと、もちろん政府も東電も責任があるけれど、いい気になって電気を使い、「足りなければ作れ!」と言ってきた私たち国民にも責任があり、その一人であることに責任を果たすことが必要だったと思ったのです。1年目は原発の作り出す電気量は30%だと聞いたので30%の節電をしようと方針に掲げ、全社で取り組みました。みんなも東北に通い続けてくれていたので、思いは同じで頑張ってくれ、1年経った時30%の節電が出来ました。その時大飯原発が稼働され、私たちは自分の30%は節電したのに何故電気が足りないのか、どこに問題があるのかを自分に言い聞かせてわかったことは、電気を使わないと生産できない工場や人の命を救うことができない病院や警察など、平均30%ということは誰かがその分を受け持たねばならないこと、それなのに私たちは自分のことしか考えていなかったことを反省し、2年目、70%になった使用量を半分減らそう、つまり35%にしようと呼びかけ目標にしました。スタッフは、えーと言ったが、やってみようと始まり、週一回の節電会議はいつしか朝になりました。毎回出される節電のための提案は全てやり、38.7%まで下がった時、スタッフの一人が「社長もう止めよう、これ以上やるとお客様に迷惑がかかります。」と言った会議で、「諦めないよ。今諦めたらやっぱり原発は必要だったとなってしまうから。」と伝えた時、いつもおとなしい女性スタッフが、「私たちの気持ちを受け止めてくれてありがとう」と言ってくれました。彼女は第一原発の1キロのところ、双葉町で家族で自動車修理工場を営んでいた。あの事故で着の身着のままで、身寄りのない大網に家族8人で避難し、道中おじいさんが亡くなり、胸の内に辛い思いを持ちながら頑張ってくれていました。その彼女の前でちょっとぐらい大変だからもう止めようとした発言に「諦めないよ」と言ったことが彼女の言葉になり、私たちは「そうだった、こんなに辛い思いをさせてしまった責任を果たさねばならないとやってきたのだ!」とみんなで思いをもう一度一つにすることが出来ました。その時「1センチの改革がなければ1ミリの改革はまだ残っている」と話したことを覚えています。それまで自主停電を30分やっていましたが、それを35分にすることはまだ残っている、つまり掲げた目標数値を少しづつ上げたり下げたりすることで拍車をかけ、2年目の終了時には37.8%に下げることが出来ました。3年目は30%を破ろう、6年目の今は20%の使用料で不自由なく仕事しています。私たちはやればできるということを共有することが出来ました。80パーセントの節電をすることのできた私たちですが、もし今度の事故がなかったら10%もできていないという側だったかも知れません。でも目の前にしたことを正面から受け止め、積み上げてきたこの歴史は私たちみんなの自信や誇りになりました。これからの大里6 「大里は将来どんな会社になるんだろう?」「どんな会社にしたいの?」そう聞かれることが多くあります。もちろんみんなにとって、つまりお客様を始め、社員はもちろん、その家族や、友人、地域の人たちすべてにとって役立ついい会社にしたいという目指すべき北斗七星はあります。でもそこへ行くために大きな目標を掲げるのでなく、目の前に見えた一つ一つの課題に、正面から向き合い、大事なことかそうでないか、私たちにできることかそうでないかと判断し、できることはやりはじめ、やり続けることで、出来ていく会社の未来を楽しみにしていきたいと思っているのです。巡り合ったかけがえのないスタッフ達とともにその人生を重ね合わせ、仕事とは何か、生きることとは何かに答えを出しながら豊かな人生を送っていきたいと思っています。

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