View & Vision44
22/60

20特 集女性の活躍が地域社会を変える44機会均等法が成立した時には救われた気がした。 そうした中でサッチャー首相とお会いした。女性であることにこだわり失礼な質問を繰り出す周囲をどう思うか尋ねたところ、朗らかに「Every man is childish!」とおっしゃった後、小声で続けたのが冒頭のコメントだった。 今や、各国に女性のトップは珍しくない。女性であることは、明るいとか社交的とかいうキャラクターの一部でしかないという認識も社会に広まってきたと思う。女工哀史のような悲惨な労働から女性を護るための法が、逆に女性の社会進出を阻んでしまっていた時代は終焉し、性差に関係なく自己実現できる環境の整備が進んでいる。だからこそ、80年代に後戻りするような女性問題の議論ではなく、新しい枠組みで、男女を超えた皆が輝ける仕組みを議論したい。 興味深いデータがある。昨年の米国大統領選挙でメディアが軒並み流れを読み間違えたことは記憶に新しい。強烈な個性のトランプ氏がすさまじい女性蔑視発言や猥褻、セクハラ・スキャンダルを繰り広げる度、メディアは、これで女性票がまた減った、クリントン優勢と書き立てた。しかし、蓋を開けてみれば、実はそれがほとんど女性票には影響しておらず、女性たちは概ね今まで通りの支持政党に従って投票していた。クリントン支持の54%が女性、トランプ支持の42%が女性で、その差は劇的とまでは言えない数字だろう。また、白人女性の53%がトランプに投票したという。これも、元々共和党支持者だからで、政策で判断したとされ、過去の投票パターンとほぼ同じだとニューヨークタイムズは分析している1。 即ち、2016年の大統領選挙でジェンダーはそれほど問題にならなかったのである。メディアも、クリントン陣営も、女性票の動きを大きく読み誤ったということになる。付け加えるなら、クリントン陣営はメディアの力がマスコミからネットへとパラダイムシフトしつつあることも上手く利用できていなかった。ヒラリー・クリントンが好んで使った「ガラスの天井」は、実は、女性であるが故の障害ではなく、違う要素によって作られていたのかもしれない。 翻って我が国の状況を整理すると、やはり、世界の潮流と方向を一にしていることが浮かび上がってくる。 まず、時代変遷に伴う推移について、厚生労働省の『男女共同参画白書』によれば、図1のように総務省「労働力調査」によって配偶関係別に昭和47年と平成27年の状況を比較してみたところ、25〜29歳については、昭和47年には配偶者有りの割合が未婚を上回っていたが、平成27年には未婚の方が上回り、晩婚化が進んでいることがわかる。2 女性の就労に関する意識の変化に関しても、図2の米国からの教訓2我が国の女性をとりまく状況31 Why Women Did Not Unite to Vote Against Donald TrumpNov. 12, 2016   New York Times2 図1 http://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/h28/zentai/html/zuhyo/zuhyo01-00-04.html 2017.7.1図1図2

元のページ  ../index.html#22

このブックを見る