View & Vision44
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4044トピックス 2017年4月25日、今村雅弘前復興相が東日本大震災について、「これは、まだ東北で、あっちの方だったから良かった。もっと首都圏に近かったりすると、莫大な甚大な被害があったと思う」と発言し1、その後、辞任する騒動へと発展した。また、2017年4月4日の会見で今村氏は、「何で無責任だと言うんだ。無礼だ。もう二度と(会見に)来ないで下さい」、「うるさい」などと発言し2、今村氏が一方的に会見を打ち切る模様が報道された。 これらの言動は、復興庁の存在意義として掲げられている「被災地に寄り添いながら」という基本理念とも大きくかけ離れており3、復興大臣としての資質を誰もが疑った。 この騒動のように、組織のトップが信頼を失墜させ、辞任にまで追い込まれてしまうのはなぜなのか、またそのような過ちを犯さないために、組織トップのリーダーシップはどうあるべきなのか、本稿では、この騒動における問題点を振り返りながら、中小企業における経営トップのリーダーシップのあり方について、組織の存在意義を示す組織理念、すなわち中小企業でいう経営理念とそれを支える信頼関係との関係性から考えてみたい。 組織トップの失言は、危機管理やリスク対策上の問題として扱われるケースが多い。しかし、本稿では、この問題を組織トップのリーダーシップのあり方に潜む問題として捉え、組織の基本理念と乖離した言動をとった場合に起きる弊害について、中小企業における経営トップのリーダーシップとそれを支える経営理念の観点から考察するとともに、経営理念が効力を発揮する前提条件としての信頼関係構築の重要性について述べてみたい。 今村氏は、リーダーシップを十分に発揮することなく復興庁を去ったが、ここでは、トップの言動をリーダーシップの一要素と捉え、中小企業における経営トップのリーダーシップの重要性について確認する。 金井[2007]は、「リーダーシップとは、フォロワーが目的に向かって自発的に動き出すのに影響を与えるプロセスである」としている4。そして、「上司が描中小企業経営トップのリーダーシップと前提条件―今村雅弘前復興相の辞任騒動を振り返りながら―トピックス佐竹経営研究所代表、千葉商科大学大学院商学研究科客員教授(中小企業診断士養成コース担当)、千葉商科大学商経学部非常勤講師佐竹 恒彦SATAKE Tsunehikoプロフィール早稲田大学大学院修了 (経営管理学修士(専門職))、千葉商科大学大学院修了(博士(政策研究))。主な研究業績に「企業再生時の戦略検討・経営理念検討プロセス—WOWOW社の事例と経営者のリーダーシップ開発の観点から—」(『千葉商大論叢』第54巻第1, 245-264頁)など。1.はじめにI 中小企業における経営トップのリーダーシップの重要性1 朝日新聞デジタル2017年4月25日「今村復興相、辞任へ 大震災『東北で良かった』と発言」(2017年4月27日閲覧)2 朝日新聞デジタル2017年4月4日「首相、迷わず『更迭だな』パーティー向かう前に判断」(2017年4月27日閲覧)3 復興庁のホームページにおける「復興庁の役割」において、「復興庁は、一刻も早い復興を成し遂げられるよう、被災地に寄り添いながら、前例にとらわれず、果断に復興事業を実施するための組織として、内閣に設置された組織です」と記述されている。4 金井壽宏[2007]「サーバント・リーダーシップとは何か」, 池田守男著・金井壽宏著『サーバントリーダーシップ入門』かんき出版, 42頁

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