View & Vision44
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4144トピックスく絵が実現するとうれしいと心から思うから、この人についていけばそれが実現できそうだと展望できるから、この人は自分たちのことを思ってくれていると感じるから、厳しそうでもその人に喜んでついていく」のがリーダーシップの本来の姿であるとし、予算配分や人事権などの管理制度や仕組みに依拠し、他の人々を通じて事を成し遂げる「マネジメント」とは異なると指摘する5。 Kotter[1996]は、図1に示すとおり、リーダーシップ機能とマネジメント機能を明確に分け、「リーダーシップは、組織の将来はどうあるべきかを明らかにし、そのビジョンに向けて人材を整列させ、さらに待ちかまえる障害をものともせず、必要な変革を実現する方向に人材を鼓舞するというプロセス」であるとし、変革を成功させる重要なプロセスとしての定義づけを行っている6。 そして、意義ある変革を成功に導く原動力はリーダーシップであって、マネジメントではないと主張し、十分なリーダーシップが発揮されなければ、新戦略やリエンジニアリングなど、どのような変革であろうと、成功の可能性は低くなると指摘した7。 経営資源の乏しい中小企業が成長を果たすには、限られた経営資源を有効活用する合理的な戦略や計画、優れたマネジメントが欠かせない。しかし、たとえ合理的な戦略や計画が存在し、優れたマネジメントがなされたとしても、経営トップのリーダーシップが十分に発揮されなければ、中小企業の成長性はきわめて乏しい。 それは、経営トップのリーダーシップは、大企業以上に中小企業経営に大きな影響を及ぼすと考えられているからである。つまり、中小企業が存続・成長するためには、経営トップのリーダーシップの下での全社的な改善・改革に向けた不断の努力の積み重ねが重要で8、従業員規模が小さくなるにつれて、戦略的柔軟性の高低に係わりなく、変革型リーダーシップが直接的に従業員の率先行動に影響を及ぼすとされているからである9。5 金井[2007]29-30頁6 Kotter, J. P. [1996]. Leading change. Harvard Business Press.(梅津祐良訳『21世紀の経営リーダーシップ』日経BP社, 1997年), 46頁7 Kotter, J. P. [1999]. John P. Kotter on what leaders really do. Harvard Business Press. (有賀裕子・佐藤智子・朱タール麻千子・鈴木章子訳・黒田由貴子監訳『リーダーシップ論』ダイヤモンド社, 2005年), 19頁8 高石光一[2012]「中小企業における経営者の変革型リーダーシップと企業の戦略的柔軟性が社員の率先行動に及ぼす影響に係る実証研究」『中小企業季報』大阪経済大学中小企業・経営研究所、No.1(通巻第161号), 1頁9 高石[2012]10頁図 1 リーダーシップ機能とマネジメント機能出所:Kotter[1996]113頁に依拠し筆者作成

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