View & Vision44
48/60

4644【…中小企業診断士の仕事とその魅力…】 ビジネスパーソンを対象とした調査結果の中で、「取得したいビジネス関連資格」のトップに「中小企業診断士」があげられて話題になっている1。中小企業診断士は経営コンサルタント唯一の国家資格であるという以外にその仕事や活動の範囲が広く、幅広い活躍を期待できることにも人気の秘密があるように思われる。 そのような幅広い活動を裏付けるのは、例えば中小企業診断士の一次試験の出題範囲を見ても明らかなように、ビジネスに関わる多くの知識と、それらを活用した経営診断のスキルがあるからである。それらを習得した中小企業診断士の仕事や活動範囲は、例えば次のようなものがある。①経営診断…中小企業診断士にとって最もポピュラーな業務である。中小企業をはじめ、組合等の集団組織の診断、商業や街づくりに関わる地域活性化診断、近年では商業観光化の進むターミナルや観光スポットとなる商業ビルなどの診断、さらにはスポーツ協会など、企業以外の団体組織の経営診断などに関わることもある。②顧問企業支援…上記の経営診断の延長上に特定の企業の顧問指導がある。顧問先企業との関係は単発の経営診断に比べて比較的長期に関与する場合や特定の業務にプロジェクトの一員として参加するなどの場合もある。関与する企業の成長・発展は中小企業診断士の知識や能力が同時に磨かれていくプロセスでもある。中小企業診断士が最も力を問われる診断である。また、顧問企業の支援は、経営革新の連続であり、中小企業診断士は新たなイノベーションの一環として新規事業開発、海外事業展開などにも関わる。③著作…経営診断の経験により専門分野の事例が蓄積されるにつれて経営診断士独自の理論が形成されていくため、ビジネスに関わる執筆活動も多い。④講演・研修…経営診断の経験や著書により広範囲に自身が認知され、その専門性が認識されるにつれて、講演や研修の講師といった活動に発展する例も多い。⑤起業・創業支援、新規事業開発支援…中小企業診断士は国や地域の将来を担う新たな企業の創業や起業の支援にもかかわる。とりわけ、伸び悩む日本の開業率を押し上げる創業・起業は日本再興戦略の中で目標づけられており、中小企業診断士はこうした重要な国の施策にも直接的に関わる立場にある。⑥人材育成…経営診断の結果は、企業側が実践することで初めて成果に結びつく。その担い手である企業の人材の育成に関わることは、中小企業診断士の重要な役割である。中でも、魅力的な経営者のノウハウを承継する後継者の育成は、有力な企業の存続、成長につながる重要な仕事である。千葉商科大学大学院商学研究科客員教授前田 進MAEDA Susumuプロフィール博士(商学)。現在、千葉商科大学大学院客員教授。明治大学商学部講師。株式会社マネジメントコア前田代表。中小企業診断士。中小企業大学校講師、全国商店街振興組合連合会各種委員会委員を歴任。街づくり指導をはじめ、空港関連企業から専門店まで小売・サービス企業を中心に経営改善、人材育成、起業・創業支援等のコンサルタント業務に従事。日本経営診断学会理事。日本消費経済学会々員。日本マーケティング学会々員。中小企業診断士養成コース1 日本経済新聞社と就職・転職情報サービスの日経HRは共同で、ビジネスパーソンを対象に新たに取得したい資格(語学検定含む)を調査した。首位は中小企業診断士で前年の6位から大きく順位を上げた。上位には英語能力テスト「TOEIC」や企業の財務部門での業務に活かせる日商簿記検定など、実用性の高い資格が多く入った。2016年6月12日付け日本経済新聞朝刊。

元のページ  ../index.html#48

このブックを見る