View & Vision44
49/60

4744 これら以外にも、コンサルタントとしての活動を通じて多くのビジネスの機会や人との出会いがあり、多方面での活躍が期待できる魅力的な仕事である。【…中小企業診断士養成コースの現場…】 千葉商科大学大学院の中小企業診断士養成コースは、すでに8期生を迎えている。本コースの特徴は、一次試験の合格者が土日を中心とした2年間の学習と実習により、中小企業診断士という国家資格と大学院の修士号を取得するという点にある。毎年、全国から多様な業種、職種の経歴を持つ幅広い年齢層の受講生が受験し、その多くは職業を持ちながらカリキュラムに取り組んでいる。 本学養成コースは、実践的な診断技術の習得に関わる演習と診断実習から成るが、その指導教官として中小企業診断士の有資格者が多く関わっている。しかし、指導に当たっては、あえて指導する側の経験則を抑制し、理論的な根拠を十分に検討し尽くし、「因果関係の明確な診断」、「現場に強い診断」をテーマに学ぶことを重視している。そのため、単に診断の技術を学ぶだけでなく、なぜその技術を適用するのか、本当にこの企業にその理論と技術を適用して診断すべきなのかについて議論を尽くし、提案へと導く指導を行っている。 特に、診断企業の経営者や従業員、その企業の歴史的な背景や特徴を無視して、標準的な診断をするのでなく、卒業後に企業内診断士として活躍する場合も含めて現場を改善できる実践的な診断能力を養成することを重視している。そして、実習先企業の経営者や現場の幹部、従業員の現状に即した診断提言を行うために、その円滑な進行を促進する実施計画、実行計画づくりに力点を置いている。これは本学が重視している「アクティブ・ラーニング」の主旨とも整合するものである。 現場を大事にした診断姿勢は重要で、なにより企業収益の源泉は現場にあるのであり、企業にとって現場が活力を増し、企業収益の改善を果たすことこそが経営診断の目的である。現場に行くことに臆病になって、それを避け、集めた資料や憶測だけで経営診断の輪郭をかたどり、経営者もよくわからない技術や一般的な理論で押し通そうとしても、企業側の心に届く報告をすることはできない。このため、企業から提供された資料を良く読み込んだら、何より現場に足を運んで、目で見て体感し、資料では読み切れなかったものを補足して、その企業ならではの診断を行っていくことを大切にしている。シンプルでも筋の通った診断を優先し、企業の関係者が診断結果を見て、納得していただけるような報告をすることを目的としているのである。 自動車の免許を取ったらすぐプロフェショナルなレーサーになれると信じている人はいないはずである。中小企業診断士も、資格取得後、企業内で、あるいは独立コンサルタントとして一歩一歩経験を積んで、着実に成長していけるように、講師陣と受講生が本気で議論を交わしているのである。 同時に本学では、学部生の中小企業診断士の育成にも力を入れており、入門の講座には200人もの若い学生が中小企業診断士の基礎講座を受講している。3年ほど前から開講された私が担当している「経営診断学I」、「経営診断学II」の講座にも各々70名ほどの学生が受講しており、経営診断という領域への関心の高さが窺える。【…経営診断の新視点…】 経営理論がどれほど優れていても、その理論は過去性を有している。将来や未来の経営診断の理論となりうるかどうかは疑ってみる姿勢が重要である。また、診断技術がどれほど使いやすくても、目の前の診断企業にそれを簡単に適用してよいのかということも疑ってみなければならない。その理論や技術を標準化して用いる前に、それらが診断先の企業や団体の幸せに貢献する最適な方法であるのかどうかについては、常に

元のページ  ../index.html#49

このブックを見る