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4944「消費スタイルの新潮流」―倫理的消費とボランタリー・シンプリシティ― プロジェクト研究報告リサーチ&レビュー大平プロジェクト大平修司・増田明子1.研究を実施する背景と本研究の問題意識 本研究を実施する背景には、人間社会学部に所属する増田と商経学部に所属する大平が共同研究を始めたことにある。増田は人間社会学部に勤務し始めてから、専門とするマーケティングや消費者行動を社会的課題の解決との関係で研究をしたいと思っていた。その時にちょうど大平が執筆した消費を通じて社会的課題の解決を図る消費者の論文を目にし(大平他、2015)、二人で会合を持ったのがきっかけとなっている。 増田は千葉商科大学に勤める以前は、良品計画に勤務していた。大平は以前から良品計画の取り組みに関心を持っていたが、一度知人を介して調査協力をお願いしたものの、社内の事情でそれが実現しなかった。二人は初会合後から何度も研究会を開き、良品計画の取り組みの中で、研究として面白い取り組み、またそれが調査可能かどうかを検討した。その結果、増田が良品計画に在籍している時にプロジェクトの立ち上げから関わっている「MUJI×JICAプロジェクト」を研究することに決めた。 「MUJI×JICAプロジェクト」とは、良品計画とJICA(独立行政法人国際協力機構)との協働によるインクルーシブ・ビジネスである。具体的には、 この取り組みはJICAの一村一品運動(One Village One Product:OVOP)に良品計画が協力し、キルギス現地にてハンドメイドで生産された製品(フェルトを使用した生活雑貨)をクリスマス・ギフトとして、良品計画の企画する製品と店舗ブランドである「無印良品」で販売するというプロジェクトである(図1)。インクルーシブ・ビジネスとは、開発途上国の貧困層の人々を生産者、流通業者、消費者としてビジネスのバリューチェーンに取り込み、現地で雇用や製品・サービスを生み出すことにより、貧困層の人々の選択肢の拡大と企業の事業機会の拡大を同時に進めるビジネスを意味している。 二人はまず組織の視点から、この製品開発のプロセスを検討することを決め、2017年9月に開催された企業と社会フォーラム第6回年次大会で報告した。その後、企業と社会フォーラムの学会誌に投稿し、論文が2017年9月発行予定の『企業と社会フォーラム学会誌』に掲載されることとなっている(増田・大平、2017・近刊)。図1 2016年の「MUJI×JICAプロジェクト」で生産された製品出所:良品計画ホームページより

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