View & Vision44
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5特 集女性の活躍が地域社会を変える44任しました。現在は約25名の社員さんが頑張ってくれ、慢性的な人手不足ではありますが、助け合い支え合いで補い合い、約5億円の年商をキープしています。売り上げを大きく伸ばしてはいませんが、これまでに赤字は出したことはありません。年に一度、会社の方針を書いた経営計画発表会を開催し、全社員で、経営理念である「一隅を照らす」のもとに、一つ一つの仕事を通して理念が具現化されるように努力してきました。 我が社には2つの特徴があります。1つは、環境整備と称して1日1時間掃除をすることです。これは気づく訓練として始めました。社長になって3年目、我が社はあってはならない大きな事故を起こしました。工事の仕事で、かけがえのない22歳という若き青年の命を失わせてしまうという事故です。田んぼに落ちた伐採した木を引き上げるためにトラックの荷台にロープで縛り、道路を跨いでトラックの動力を使って引き揚げようと動かしていた時、そのロープがバイクに乗った青年の首に入って命を奪ってしまったのです。一報を聞いて駆けつけてからの一つ一つは今もはっきりと覚えています。私自身も3人の子供を持つ母親として子供の命が失われるということの大きさを実感できます。だから、どんなに償っても許されはしないことを20年経った今も受け止めています。気づく訓練として1日1時間掃除をするということはこの事故がきっかけで始まりました。その瞬間に気づけなかったことが取り返しのつかない事故につながり、二度と同じ過ちをしないため、会社を再生するためには、一人一人の社員が危機に気づく、お客様の声に気づくという訓練をしなければならないと考え、始めたものです。これは20年経った今も続けています。1日1時間、目の前にある汚いものをきれいにするという環境整備は、さまざまな改善を生みました。例えば、我が社の机の引き出しには同色同種類のペンが1本しか入っていません。2本入っている必要がないと気づいたからです。2本以上入っていれば1本無くなってもわかりません、景品でもらうようなボールペンは無くなっても大事にされません。1本しか入っていなければ無くなったらすぐわかります。そしてすべてに名前が付けられるようになりました。誰かが使って持って行かれても名前が付いていれば必ず戻ってきます。どんな小さな消しゴムにも名前が付いています。また、引き出しの2段目3段目は物がしまわれるところでなく、問題が隠されるところだとも気づきました。なぜなら、机という概念は自分のもの、しかし、会社ではその全てがお客様のためのもの、個人の引き出しの中に入ってしまうことの問題に気づいたのです。その引き出しを使用禁止にし、今は引き出しすらありません。環境整備を通して気づいたさまざまなことを改善してきました。その積み上げで、どこを動かしてもゴミや埃のない事務所、必要なものは10秒で取り出せるという会社になりました。この気づきがもとで、もう1つの特徴である地域活動を併せ持ってやる会社になったのです。我が社は毎月1日の早朝は、13箇所の駅のゴミ拾いから始まります。毎月7日は3箇所に分かれて道のゴミ拾いを、毎月第2土曜日は5つの海岸のゴミ拾いをしています。仕事をさせてもらっている地域の道、駅、海への感謝の気持ちを月に一度形に表したものです。もちろん、私たちだけでなく地域の方々にも呼びかけ一緒にやっています。また、我が社は創立30周年に本社を移転し、グランドピアノを置きましたが、そのピアノを見て地域の方が「良いわね大里さんは!ピアノがあって!」と言われました。気づく訓練をしている私たちはその方がなぜ「いいわね」と言われたのかを深掘りします。よくよく聞いてみると、お嬢さんが音大を出て、卒業してもピアノを弾ける仕事には就けなかったとのこと。音大卒業生の7割の人が活かす仕事に就いていないと知りました。何年も練習してきたのに、もったいないなと思い、片方では生の音楽を聴くことのできない人もたくさんいる!ここを繋げればと思ったのです。場所は!我が社はどこを動かしてもゴミや埃はありません。どこを取ってもきちんと整理整頓されている。昼休みは仕事が止まっている。つまりその時間、仕事に使われていない空間のこの場所でコンサートを開くのです。昼休みになると幾つかの机を動かして椅子を並べ、どこからともなく音楽を聴きに地域の方がいらっしゃる、そこにピアノやフルートなど音楽を奏でる人が来てささやかな昼休みコンサートになる。この他にもたくさんのコンサートが開かれるようになりました。また我が社の二階に大里の2つの特徴3

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