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4746 本稿では、経済研究所主催による公開シンポジウムでのゲストスピーカー等による講演トピックスを紹介する。(詳しくは、本誌掲載の本文を参照されたい。)1.変化の時代を生き抜くFinTech活用:明るい未来の会計・税務に向けて 中村元彦氏(本学会計ファイナンス研究科教授)は、Finance(金融)とTechnology(技術)を掛け合わせた言葉であるFinTechにより、銀行業、証券業、保険業などといったそれぞれの「生業」として固定化してきた金融のあり方を利用者の目線から改めて捉え直すことが、非金融事業からの参入や金融機関の動き(自らの事業、サービスのあり方)の見直しといった金融の担い手を変化させ、キャッシュレス化に向けて「お金」のかたちや流れを変えさせる潮流となり得ることが紹介された。 中小企業においては、会計・経理業務等バックオフィスの効率化や資金繰りの改善、成長投資へのリソースシフトなどにより企業の収益力が劇的に向上し、クラウドから多様な資金調達手段を活用したベンチャー企業の勃興・成長を可能とする等「生産性革命」となる可能性を紹介された。 政府税制調査会海外調査報告によるエストニアやスウェーデンの海外事例として、政府が納税システムとリンクした企業会計システムを提供していることから、修正がなければクリックのみで確定申告が可能となるなど納税者の利便性が向上している。また、新興企業や中小企業の経理・税務のサポートのため、法人税や付加価値税等の申告書、電子インボイスの作成、納税等を迅速・正確に行うことが可能となっており、電子申告割合が非常に高い水準となっている。 会計・税務の未来として、手作業による仕訳の入力作業自体は減少していく方向となる。現金取引の減少と証憑類の電子化の進展(電子契約書など)により、経理担当者は単純作業から解放される。FinTechにより、経理業務が従来方式の守りから攻めに転換する第一歩となり、企業の経理部門がより一層「要の部署」に変化するとした展望を述べられた。2.オープンAPIへの取組みについて 関谷俊昭氏(千葉銀行経営企画部フィンテック事業化推進室兼T&Iイノベーションセンター)は、社会の「デジタル化」に対応したデジタルバンキング戦略として、FinTechを活用した新たなビジネスモデルを、「TSUBASAアライアンス」(地銀の広域連携による戦略的アライアンスの名称)を軸に積極的に開発中であることを紹介された。 「TSUBASA FinTech共通基盤」の構築により、金融分野に限らず、様々な事業者間で価値のある情報連携が可能となる「生態系(APIエコシステム)」の形成を目指すオープンイノベーションを促進している。API共通基盤を構築し、銀行法改正に伴う努力義務化への対応を行うと共に、外部企業との接続によるサービスの多様化や行内開発のスピードアップとコスト削減を目指している。システム自由度が高いAPI共通基盤の構築ではTSUBASAアライアンス加盟行のみならず、幅広い金融機関が利用できるプラットフォーム化を図ると共に、インターネットチャネルの再構築を行うオムニチャネル化の推進を目指していることを紹介された。3.FinTechが変える会計の今とこれから 岡本浩一郎氏(弥生株式会社代表取締役社長)は、会計の本質的価値は「自分の事業が今どんな状況にあるかを正確にかつタイムリーに把握する」ことであり、事業の健全事業レポート2018年7月7日公開シンポジウム変化の時代を生き抜くFinTech活用~銀行、企業、ベンダーの事例から学ぶ~千葉商科大学経済研究所 一般客員研究員鈴木 羽留香SUZUKI Haruka

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