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447特 集SDGS最前線はじめに:持続可能性新時代の幕開け1激動の世界で、環境・社会の持続可能性への貢献が組織の発展の必須要素となっている。それに関連し今求められている外来語がCSR(Corporate Social Responsibility:企業の社会的責任)やSDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)である。本稿ではこれらを「自分ごと化」して理解し発信する手法と関係者連携により新たな価値を生み出す「協創力」の必要性を考えたい。「不易流行」(ふえきりゅうこう)。時代が激しく変化している中で、松尾芭蕉のこの考えを思い出す。芭蕉の俳論といわれるこの考えは奥が深い。「不易を知らざれば基立ちがたく、流行を知らざれば風新たならず」(『去来抄』)というものだ。要するに、「不易」は、いつまでも変わらないこと、「流行」は、時代に応じて変化することである。変化しない本質的なものをよく見極める一方で、新しい変化も取り入れていくことの重要性を表している。これは実に持続可能性の本質をうまく言い表す表現であると思う。今、国づくり、地域づくり、企業経営に求められているのは、中長期的な展望に立った持続可能な(サステナブルな)設計である。急速なグローバル化の中で、外国人が認めたり、国際機関が作ったものがすべて日本に適用できるというものではない。「いいものは残る」。突き詰めればそういうことであろう。むしろ、いいものを見つけるきっかけとして外国人の目線や国際的な考えを取り入れるということだ。本稿の主題である、国連で決めた「持続可能な開発目標」は後述するように持続可能性に関する世界の共通言語である。これは「流行」ではなく「不易」の考え方として今後定着していくと考える。本稿では持続可能性を基幹とするSDGsの理解の前提となるCSRやCSV(Creating Shared Value:共有価値の創造)を再考する。そのうえで、SDGsがなぜ企業・自治体・大学などのステークホルダーに必須なのか、その効果は何か、ESGとの関係は何かといった現下の経営ニーズの高い論点に触れる。持続可能性新時代とは何か2⑴発信型三方良し企業は、本業を使い関係者との「協創」により商機につないでいる。この点は競争戦略の権威である米国のマイケル・E・ポーター教授らが、2011年に自社の利益と社会価値の同時実現を目指す「共有価値の創造」(CSV)という新たな競争戦略を示した。これを考えてみるに、日本では、現在の滋賀県の近江商人の経営理念である「三方良し」(自分良し、相手SDGs先進国を目指す株式会社伊藤園 顧問千葉商科大学経済研究所一般客員研究員笹谷 秀光SASAYA Hidemitsuプロフィール株式会社伊藤園 顧問東京大学法学部卒。1977年農林省入省。2005年環境省大臣官房審議官、2006年農林水産省大臣官房審議官、2007年関東森林管理局長を経て、2008年退官。同年株式会社伊藤園入社、2010-2014年取締役、2014-2018年常務執行役員、2018年5月より現職。著書『CSR新時代の競争戦略』(日本評論社・2013年)、『協創力が稼ぐ時代』(ウィズワークス社・2015年)。『経営に生かすSDGs講座』(環境新聞社・2018年)。笹谷秀光公式サイト:発信型三方良し(https://csrsdg.com/)特 集SDGs最前線

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