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特 集EBPMと行政事業レビュー948パート6人を雇用している。「壱岐島交流促進事業」(平成25年度~)も当該交付金の支援による。外国人観光客向けには、「英・中・韓等多言語によるポスターやプロモーションビデオ等を作成し、観光案内所や空港でのポスター掲示や無料動画共有サイトでの配信などで情報発信」を行った。結果、外国人宿泊客数は平成24年度の90人から平成27年度には621人まで増加しているという。しかし、これらの成果はエビソードベースであり、EBPMになっていない。例えば、類似した支援の効果について他の離島の結果を合わせた記述統計(平均など)も支援のなかった離島との比較(DID分析)も示されなかった。「離島の置かれている状況が千差万別」とはいうもののEBPMであれば本来、体系的・統計的な評価・分析があって然るべきだろう。もっとも離島振興に関わるのは離島活性化交付金だけではない。農林水産省など他府省の関連事業としては、農山漁村振興交付金を活用した「農山漁村における滞在交流型の余暇活動及び農林漁業体験の推進農林水産業の振興」、農山漁村振興交付金による「農山漁村の持つ自然等を活用した地域の活動」の支援、離島漁業再生支援交付金の「海洋資源の高付加価値化、体験漁業等の地域の自主性と創意工夫を生かした実践的な取組への支援」、「廃棄物処理施設の整備」に向けた循環型社会形成推進交付金の充当などもある。EBPMでは本来、(省庁の枠を超え)こうした関連事業を網羅したロジックモデルの構築と評価が求められる。「政策目的全体に占める検討対象の政策手段の与える寄与度がどれくらいあるのかを見ないと、当該政策手段の効果がどれくらいか分からない」からだ(内閣官房行政改革推進本部(平成29年11月))。行政事業レビュー5行政事業レビューでは事務局(公開プロセスは各府省の会計課等)から論点が提示される。離島に必要な経費(離島交付金)事業に係る論点としては、(1)統計データ等、いわゆるエビデンスに基づく現状分析、アクティビティ、初期アウトカム、中長期アウトカム等について、論理の飛躍や破綻なく、本事業の特性に応じて適切にロジックモデルが作成されているか、(2)離島における著しい人口減少の防止、定住の促進に向けたアクティビティとして適切な内容となっているかどうかが挙げられた。はじめに離島活性化交付金のロジックモデルについてみていく。インプット=予算として平成29年度は15.5億円(当初予算ベース)が投じられている。アクティビティとしては①定住促進事業、②交流促進事業、③安全・安心向上事業が行われた。交付金は3種類の事業の中で様々なメニューを提示しているが、「離島の置かれている状況が、千差万別であるため」、離島の自治体が自らの判断で事業メニューを組み合わせて申請する形になっている。アウトプットについては定住促進事業が同年度実績で98件(6億1,600万円)の実施があった。交流促進事業は123件(4億1,300万円)、安全・安心向上事業が29件(5億1,700万円)という状況になっている。各事業には成果目標(KPI)が設定されている。定住促進事業の中で、戦略産品を開発するという目的に対しては島の特産品を原料に商品化した商品の数、あるいは物産展での売上額などが目標として掲げられている。輸送支援であれば、戦略産品の出荷量、あるいは販売量となる。交流促進事業の場合、健康をテーマにしたツアー旅行商品数、スポーツイベントへの島外からの参加者数などが目標になる。最後に安全・安心向上事業については、ハザードマップの配布の数、避難所の収容人数などになる。初期アウトカムはこれらの成果目標に合わせて設定される。その一つの効果発現率とは、事業実施後の成果目標の数値の増分を総件数で割ったものである。これが80%以上で毎年度維持するというのを成果目標としている。ただし、安全・安心向上事業に関しては、「事業の性格上、定量的なアウトカム設定は事実上難しい」という判断から定性的な目標になっている。例えば、防災計画の改訂、防災施設の耐震化、防災避難経路の案内表示など目標はアウトカムというよりアウトプットにあたる。ロジックモデルは中長期アウトカムを含む。離島活性化交付金の究極的な目標は上位政策・施策にある「人口の著しい減少の防止」である。目標数値としては平成32年度国勢調査の年にあたる令和2年度(2020年

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