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特 集EBPMと行政事業レビュー1048度)には離島地域の人口を34.5万人以上にする。ただし、現行は38万人のため離島の人口を増やすのではなく、その減少には歯止めをかけるという意図がある。もっとも、目標の達成には、当該交付金の他、「その他の離島振興施策」にある関係府省の政策が関連してくることになる。また、初期アウトカム=事業の事業効果発現率等と上位施策の目標には距離がある。その間で、中長期アウトカムは初期アウトカムと上位施策の間を介する指標として位置付けられる。具体的には(1)定住促進事業、安全・安心向上事業については離島へのUJIターンの者の増加が挙げられる。合わせて人口流出の防止をみる指標として、「人口の社会増加した全部離島市町村の割合」を設定している。他方、(2)交流促進事業は「観光入込客数の増加した全部離島市町村の割合」を掲げてきた。こうしたロジックモデルについては、上述の通り、離島振興が省庁横断的なことから、国交省の事業に限らず、省庁横断で構築すべきとの意見があった。また、交付金対象のメニューについて各々の効果を検証するPDCAサイクルを徹底すべきであろう。合わせて「自治体の創意工夫を促すべき」であり、「全ての離島を対象にするのではなく、選択と集中を検討できるのではないか」。そのためにアウトカムへの評価を、「次の年度時期のインプット、とりわけ、個別自治体への配分に反映」することが明確ではないとの批判も出た。第2節で紹介したRCTのような手法で交付金の支援があった離島(=処置群)となかった離島(=対照群)のアウトカム(交流人口等)を比較することがあっても良い。また、人口減少を抑えるべく定住人口の確保に重きをおいた政策体系自体も疑問視された。人口減少が続く我が国において離島だけ歯止めをかけることは困難であることに加え、定住人口の確保以外の方策でも付加価値の高い商品の開発、産業の育成など離島の活性化に資する取り組みはあるだろうということだ。関連してGDPのように離島ごとで経済規模の統計を取ることが活性化を図る指標になるが、現行、そうしたデータはない。加えて、「交流人口」として観光客はカウントできるが、離島留学の生徒やその家族を含む統計はない。そもそも、観光客数を含めて統計が利用可能なのは自治体全体が離島になっている「全部離島」の場合であって、自治体の一部が離島の実態は反映されていない。中長期アウトカム指標のデータが市町村単位でしか入手することができないからだ。「EBPMの取組に必要な統計等データに対するニーズ・要望が顕在化」した例といえる。仮に統計等データの整備に繋がり、統計データの利活用が促されるなら、EBPMと統計改革の「好循環」となろう。こうした議論の結果、本事業に関する評価結果とし図表4:離島活性化交付金のロジックモデル出所:国土交通省

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