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特 集EBPMと行政事業レビュー1248EBPMによる再モデル化のレビュー1政府がEBPM(Evidence Based Policy Making)の導入に対して積極的な姿勢を見せ始めたのは2017年夏、官民データ活用推進戦略会議・官民データ活用推進基本計画実行委員会の下に、EBPM推進委員会の開催が決められてからである1。翌2018年6月に実施された行政事業レビュー公開プロセスには、EBPMの観点から事業の見直しをはかる試みがなされ、いくつかの事業がレビューの対象とされた。ここで議論する農林水産省の「国産農産物消費拡大事業のうち健康な食生活を支える地域・産業づくり推進事業」もその1つである。留意したいのは、この段階でレビュー対象になった事業は、本事業も含め、そもそもEBPMに基づいて設計されたものではないという点である。実際、公開プロセスにおいて農水省の説明者は「この事業を始めた平成28(2016)年当時はEBPMという発想でこれをそういう意味ではやっていたわけではなかったので、今回30年度今やるときにEBPMということで、過去3年前に始めた事業ですけれども、これをEBPMのロジックツリーにあわせるとしたらどういうふうに考えられるだろうかというふうに我々今回初めてやったというところでございます」2と述べている。同事業のレビューについて農水省が想定した論点は、①ロジックモデルの妥当性、②国費投入の必要性、③事業の成果目標、であるが3、議論の中心となるのは①ロジックモデルの妥当性である。なぜなら、事業の成果目標はロジックモデルの一部であるし、ロジックモデルの妥当性を議論するなかで国費投入の意義の判断がなされる場合や、国費投入に値するロジックモデルを再構築できる可能性があるからである。本稿の狙いは、EBPMに基づかずに設計された本事業のEBPMによる再ロジックモデル化の妥当性の検証と、それを通じて、EBPMに基づかずに設計された事業のEBPMによる再ロジックモデル化の一般的限界を示すところにある。 農水省によるロジックモデルの説明2図表1は農水省が提示したEBPMに基づいて再構築された本事業のロジックモデルである。公開プロセスは、同図表に基づいた農水省の説明から開始された。まずはモデルを理解するために、少し長くなるが、その説明を全文引用してみたい(下線筆者)。既存行政事業のEBPMによる再設計の限界―機能性表示食品制度を農産物に広げる事業のレビューより―株式会社PHP研究所永久 寿夫NAGAHISA Toshioプロフィール株式会社PHP研究所取締役専務執行役員(研究グループ総括)。政策シンクタンクPHP総研前代表。事業仕分け・行政事業レビュー評価者、国家戦略会議フロンティア分科会事務局長などを歴任。カリフォルニア大学(UCLA)、Ph.D.(政治学)。特 集EBPMと行政事業レビュー1 EBPM推進委員会の開催について(平成29年7月31日官民データ活用推進基本計画実行委員会会長決定)、https://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/ebpm/pdf/konkyo.pdf。2 平成30年度農林水産省行政事業レビュー公開プロセス、No.8国産農産物消費拡大事業のうち健康な食生活を支える地域・産業づくり推進事業(議事録)、p.15、http://www.ma.go.jp/j/budget/review/h30/koupro/pdf/30_gizi-8.pdf。3 同上(論点)、http://www.ma.go.jp/j/budget/review/h30/koupro/pdf/30_ronten-8.pdf。

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