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特 集EBPMと行政事業レビュー2048On the Review1 政策の内容と効果のあいだに期待される因果関係をロジックモデルとして明示し、客観的・科学的に検証・評価する試みとしての「証拠に基づく政策形成」(evidence-based policy making; EBPM)について、近年我が国でも取り組みが進められてきたことは、よく知られているだろう。2017年5月に発表された「統計改革推進会議最終取りまとめ」(https://www.kantei.go.jp/jp/singi/toukeikaikaku/pdf/saishu_honbun.pdf)、「世界最先端IT国家創造宣言・官民データ活用推進基本計画」(https://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/kettei/pdf/20170530/siryou1.pdf)はともに、国民に信頼される行政を実現するためにも統計などの客観的データに基づいて政策実現の各段階  事実・課題の把握、政策効果の予測と測定、評価  を進めることが重要だと指摘し、EBPMの実践を通じて統計データ等の改善も進むというサイクルの確立を提言している。 これを踏まえ、同年夏には内閣官房副長官補(内政担当)を会長として政府全体としてのEBPM推進委員会が組織され、全省庁にEBPMの統括責任者が置かれるなど、その推進機構が整備された。さらに、このような体制整備を踏まえた実際の取組みとして「三本の矢」、すなわち行政事業レビュー、政策評価、経済・財政再生計画の点検・評価を通じてEBPMの実践を進めることが目指されることとなり、2017年11月に実施された年次公開検証(秋の行政事業レビュー)の際に、モデル事業を対象としたもの(農水省・次世代施設園芸拡大支援事業、経産省・IoTを活用した社会インフラ等の高度化推進事業(うち製造分野:スマート工場実証事業)、文科省・情報通信技術を活用した教育振興事業(うち、情報教育の推進等に関する調査研究))、複数省庁関連事業(厚労省・建設労働者雇用安定支援事業費、国交省・建設業における女性の働き方改革の推進)の2セッションが実施された。 多分に偶然の経緯ではあるが、筆者は行政改革推進会議・歳出改革ワーキンググループのメンバーとして両セッションでの議論に加わり、取りまとめを担当する機会を得た。おそらくはそれも一つの理由だったのであろうが、翌2018年度に行なわれた経済産業省の公開プロセス(春のレビュー)において、対象となった全事業においてEBPMの方法論が試行される運びとなり、ロジックモデルの作成と検証が行なわれることとなった際に、今度は経産省側により選定された外部有識者として、その評価に加わる機会をいただいた。実際に参加したのは、対象となった8事業のうち一般会計関係の4事業である。 本稿は、わずかなものであるがその際の経験をもとにして、EBPMの手法と考え方がその際にどのように機能したかについて述べようとするものである。もとより、本稿の内容は個々の事業に関する言及も含めEBPMからPDCAへその試行から読み取るべきもの慶應義塾大学法学部 教授大屋 雄裕OHYA Takehiroプロフィール東京大学法学部卒。同大学院法学政治学研究科助手、名古屋大学大学院法学研究科助教授・教授(総長補佐)などを経て現職。専攻は法哲学。行政改革推進会議・歳出改革WG委員、地方制度調査会委員、内閣府「人間中心のAI社会原則検討会議」構成員などを務める。特 集EBPMと行政事業レビュー

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