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特 集EBPMと行政事業レビュー2148て筆者の私見であり、個々の政策分野に関する知識においても分析に関する専門的知見においても相当の限界を有することについてはお許しいただきたいと思う。Reviewing the Review2 ではまず対象となった4事業について、その内容と評価において問題となった点を簡単に示すことにしよう(以下、各事業に言及する場合は冒頭の番号と事業名の一部により略記することとする)。①独立行政法人日本貿易振興機構運営費交付金 この事業は、経産省所管の独立行政法人として政策実現・情報収集に関する実働の相当部分を担っている日本貿易振興機構(JETRO)に対し、その活動に必要な予算の基盤的部分を運営費交付金として支出するものである。JETROは(1) 日本への直接投資促進、(2) 農林水産物・食品の輸出促進、(3) 中堅・中小企業の海外展開支援、(4) 通商課題への対応など多様な分野での活動を担っている大組織(正規職員数約1,800名)であり、運営費交付金の額も  効率化を進めるため定常的な削減のもとにはあるが  平成29年度予算で268億円を超えている。アジアの地域研究において強い存在感を持つアジア経済研究所でさえ、その一部門であるにすぎない。そのため、アウトプット・アウトカム等の指標も大括りの活動分野に対応して設定されるに留まり、たとえば(1)については投資プロジェクトの管理件数と拠点誘致の成功件数、(2)については輸出支援件数と輸出成約金額といった形になっている。(2)に関連した取り組みとしては海外事務所における輸出規制や課題への対応、すなわち輸出相手国において不正・不当な手続きなどが存在する場合にその改善を求めて働きかけるような活動も含まれるが、そういったものはあくまで間接的要素として扱われ、指標上は確認できないということになろう。 あるいはアジア経済研究所の取組みも(4)に含まれているのだが、アウトプット指標としては調査・研究を発信しているウェブサイトの閲覧件数が挙げられているに留まり、同研究所の研究水準や評価といった質的要素は捨象されることになっている。活動内容(たとえば対日投資促進のための情報提供・相談業務)が結実した成果としての投資実現件数のみをアウトカムとして計上するなどロジックモデルにおける因果関係の設定は適切と考えられるのだが、個別的な活動や政策の適切さを評価するものとしては十分に機能しないのではないかという疑念は呈されるところだろう。 また、たとえば現実の投資額の正確なデータが支援対象となった各企業から必ずしも提供されないといった問題による限界があるとはいえ、最終的に期待されるインパクトが対内直接投資の残高(2020年度において35兆円、対2012年度比で倍増)という政府目標の実現に置かれていることを踏まえれば、JETROの活動の結果としてどの程度の金額的成果が実現したのか、それがインパクトにおける数値目標にどの程度貢献したかを目標として設定し、実態を確認することが必要ではないかとも指摘された。別の言い方をすれば、行政機関の活動から効果へというフォアキャスティングな目標設定のみではなく、社会において期待されるインパクトから逆算するバックキャスティング型の目標も必要ではないか、ということになろう。②日本政策金融公庫補給金  中小企業信用補完制度関連補助・出資事業 ここでは、実際には二つの事業としてレビューシート上も扱われているものを組み合わせて対象とした。第一は中小企業信用補完制度に関連する補助である。一般的に中小企業は信用力に乏しく、リーマンショックや東日本大震災などの外的な事情で景気が急激に減速した際に資金繰りに窮する可能性がある。そのような場合に信用保証協会による保証を提供することで民間金融機関の融資を補完することが必要となるが、当然ながら貸し倒れが生じる一定のリスクがそこには内在している。これを単に放置したのでは信用保証協会がリスク回避的に行動する結果として所期の目的(民間金融の補完)が実現できないので、協会が代位弁済することになった際に一定割合を補助するというものである。 第二は日本政策金融公庫が融資を行なう際に政策的に必要と判断された分野については基準金利以下の「特別利率」を適用させるため、これによる減収分を

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