view&vision48
27/74

特 集EBPMと行政事業レビュー2548EBPM(Evidence-Based Policy Making)。日本語では「証拠に基づく政策立案」と訳されるこの言葉が、少しずつではあるが政府でも注目されつつある。EBPMとは、「(1)政策目的を明確化させ、(2)その目的のため本当に効果が上がる行政手段は何かなど、「政策の基本的な枠組み」を証拠に基づいて明確にするための取組。」(平成30年3月6日内閣官房行政改革推進本部事務局資料より)とされる。政策・事業の立案をする時に、その目的を明確化したうえで効果の測定に重要な関連を持つ情報やデータ(エビデンス)に基づいたものにしようというものだ。この際、政策・事業がその目的を達成するに至るまでの因果関係を論理的に説明できなければならず、プロセスが体系化された図は「ロジックモデル」と呼ばれる。ロジックモデルは一般的には、資源(インプット)、活動(アクティビティ)、直接の結果(アウトプット)、成果(アウトカム)(初期、中期、長期などいくつかの段階に分かれる)、最終的な影響(インパクト)によって構成される。つまり、ロジックモデルが明確にならない限り、EBPMの考え方が定着することにはならない。「エピソード・ベース」から「エビデンス・ベース」に基づく政策立案の試み1EBPMの言葉が初めて政府の資料に登場したのは、筆者の知る限り、平成28年10月に当時の山本幸三行政改革担当大臣が立ち上げた「EBPMのニーズに対応する経済統計の諸課題に関する研究会」ではないかと思う。山本大臣は、平成28年8月の就任直後から統計改革の必要性を主張しており、そのための手段としてEBPMの推進が必要だと主張されていた。筆者は、外部性と公開性を用いて個々の事業の必要性や効率性などを議論し一定の結論を出す「事業仕分け」を考案した政策シンクタンク「構想日本」のスタッフとして、地方自治体の事業の評価を専門に行っている。また、2009年10月から2013年2月までは構想日本をいったん退職し、任期付きの国家公務員として、内閣府行政刷新会議事務局(主に行政改革を担当する部署)に所属していたが、それらの経験から感じるのは、これまで日本の行政事業は、エビデンス(証拠・根拠)に基づいて設計されることが少なかったということだ。新たに政策や事業を立ち上げる際、客観的なデータに基づいたうえでの課題設定があってその解決策を導くための立案ということにはならず、政治家を含めた利害関係者の要求や勘・経験などの「エピソード・ベース」に起因したものが多いと感じる。行政が行う政策や事業は、税金を使って行うからこそ、公益性は高い(より「みんな」のためになる)方が良い。エピソード・「EBPM」という手段の使い方~文科省「研究大学強化促進事業」の事例をもとに~一般社団法人構想日本 総括ディレクター(理事)伊藤 伸ITO Shinプロフィール1978年北海道生まれ。国会議員秘書を経て構想日本勤務。2009年10月から3年半、内閣府行政刷新会議事務局参事官(任期付の常勤国家公務員)。その後構想日本に帰任(総括ディレクター)。法政大学及び大学院非常勤講師兼務。外務省「ODAに関する有識者懇談会」座長などを歴任。特 集EBPMと行政事業レビュー

元のページ  ../index.html#27

このブックを見る