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特 集EBPMと行政事業レビュー2748ビュー』」の時からだ。行政事業レビューとは、「各府省自らがすべての事業を対象に、執行実態を明らかにした上でチェックの過程を公開しつつ外部の視点を活用しながら点検を行い、結果を予算に反映させる取組み」(内閣官房ホームページ)である。点検にあたって、各府省はすべての事業について「行政事業レビューシート」を作成し公表することが義務付けられている。行政事業レビューシートには、各府省庁が行う事業ごとに、「目的」「事業の内容」「予算額」「資金の支出先」「成果目標と実績」など約30項目が記載されている。この一連のプロセスの中で、各府省は毎年春に、各事業について予算が前年度に最終的にどこに支出され、どのように使われたかなどの実態を把握し、事業の自己点検を行うこととなっており、そのうちいくつかの事業については「外部の視点」を活用して「公開の場」で議論を行っている。これを「公開プロセス」と呼んでいる(公開プロセスは、議論の模様をインターネットによるライブ中継している)。さらに、毎年秋には、各府省が公表した行政事業レビューシートを基に、見直しの余地がある事業を対象として、総理大臣が議長の「行政改革推進会議」が主催の「秋のレビュー」と呼ばれる公開検証を実施している。この一連のプロセスを「行政事業レビュー」と呼んでいる。この行政事業レビューにおいて、平成29年度からEBPMの考え方の議論への導入を試みたのである。具体的には、いくつかの事業について、ロジック・モデルを作り、かつ「公開プロセス」や「秋のレビュー」の対象事業の中のいくつかを「EBPMの試行的実践」と位置づけ、予算の削減などよりもロジック・モデルやエビデンスを用いて事業をより効果的なものに改善していくための議論を中心にした。行政事業レビューでも、これまでからアウトカムについての指摘が多く出ていたことから、行政事業レビューシートを活用してエビデンスを明確化していこうという考えに基づいたものといえる。行政事業レビューの根源は「事業仕分け」4ちなみに、この行政事業レビューの根源には、構想日本が考案した「事業仕分け」の存在がある。構想日本は2002年に事業仕分けを考案し、主に地方自治体を対象に実施してきた(2018年度末現在で118自治体、246回実施。現在でも毎年度15か所程度の自治体で行っている)。事業仕分けの意義が報道等で取り上げられるようになり、2008年には自民党の政務調査会のもとに設置された「無駄撲滅プロジェクトチーム」(PT)の班長の一人だった河野太郎衆議院議員から依頼があり、構想日本が協力して初めて国の事業仕分けを実施するに至った。その後、当時の民主党政権が、政府として初めて事業仕分けを実施。その翌年から事業仕分けの考え方を各府省で内生化することを目的に行政事業レビューが誕生した。現在の自民党政権に交代した後の平成25年4月5日には、行政事業レビューを毎年度実施することを閣議決定している(筆者は、無駄撲滅PTの事業仕分けに協力した際の主担当であり、また、政府が行った事業仕分けや行政事業レビューが始まった際に、それを所管していた内閣府行政刷新会議事務局参事官としてとりまとめ業務を行うなど、このプロセスのすべてに直接的に関わってきた)。行政事業レビューのように、行政事業について外部の視点で、かつ公開のもとで行う取組みは、おそらく世界で日本だけだろう。「研究大学強化促進事業」の議論から見えるEBPMの特徴5筆者は現在、内閣官房行政改革推進会議「歳出改革WG」の委員を務めており、先述の行政事業レビューの「公開プロセス」や「秋のレビュー」の議論に参加している。平成30年春に文部科学省で行った公開プロセスのうち、EBPMの試行的実践の対象となった「研究大学強化促進事業」の議論を振り返りながら、EBPMの視点を活用することの特徴や意義、今後の可能性などについて考えてみる。行政事業レビューシートを見ると「研究大学強化促進事業」の目的は、「我が国の大学等が、研究マネジメント人材(リサーチ・アドミニストレーターを含む)群の確保や集中的な研究環境改革等の研究力強化の取

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